「夏休み、トマと一緒に空の冒険に出かけよう!」グランド・ジャーニー shironさんの映画レビュー(感想・評価)
夏休み、トマと一緒に空の冒険に出かけよう!
ニルスに憧れた大人たちにも響くこと間違いなし。
新型コロナの影響で、なかなか劇場に足を運びにくい状況が続いていますが、出来ればこの夏休みは映画を通して特別な体験をして欲しい!想像力の翼を広げて。
子供の頃、NHKのアニメ『ニルスのふしぎな旅』が好きだったので、
真下を見ると小さな家や木々が並び、真横を見ると鳥たちと目が合うシチュエーションに大興奮!!
アッカ隊長のもと、隊を成して飛ぶ姿がカッコ良くて、人間が忘れてしまった “本能の声”に忠実な彼らの不思議な力に憧れていました。
そんな彼らに「安全な空のルート」を教えるだと?!
残念なことに、彼らの“本能の声”が導く「空の直線ルート」には、今や危険がいっぱい。
空港に高いビルや光害、狩猟区域などなど。湿地帯もアスファルトに覆われて、途中で休憩を取る場所も無い。。。
空を危険にしたのは他ならぬ私たち人間なので、おこがましくも鳥たちの“本能”に介入して「安全な空のルート」を教えるのは、せめてもの罪滅ぼしに思えますが…
いざ取り組むとなると、人間社会には規制やしがらみや、国境なんかもあって、なかなか一筋縄にはいかない。
自分達が壊して、自分達で再生しようと介入して、自分達が作った規則に阻まれる。
何やってんだ、まったく。
更に厄介なのが、それらの規則は決して“悪”だけではない部分もあり(鳥インフルエンザ問題とか)
何かを生かす為の活動が、何かを守る為の規制に阻まれる…。
しかも、失敗した時の措置が、あまりにも彼らの営みを制限するもので、人間が本能の領域に踏み込む罰を当事者に受けさせる気なのか?と憤りたくなる。
そんなこんなを鑑みると、本当にこの方法で良いのか?と迷いも出てくる。
大人になるという事は、広い視野で現実を見られるようになって、妥協や諦めを覚えて、心の折り合いをつけるのが上手になるという事なんだなぁ。。
でも!14歳のトマはそんな大人達のジレンマを飛び越えていきます。
シンプルに正しいと信じる道を突き進む勇気に、目が覚める思いでした。
無謀で無茶だけれども、世の中を変える為にはこういう勇気が必要なのかも。
それに、人間になりすぎた大人より、子供の方が確実に“本能の声”に近い。
風に身を任せて飛ぶ感覚にしても、鳥たちからの信頼にしても、大人は到底敵わない。
そもそも大人が出る幕は無かったのかも。(^^;
そして、子供が親元を巣立って大きく羽ばたく時、親は子供を信じてサポート役に徹するしかない。
自分達を超えてゆく子供の成長を見守ることで、親もまた成長するのだと感じました。
児童文学的な展開ですが、トマの活躍には胸がスカッとします。
鳥たちと心を通わせて空を飛ぶトマの姿を、最初は心配する大人目線で見ていましたが、徐々に羨望の眼差しに変わり、いつしか童心に帰って一緒に空を旅していました。
広い空の美しさ、自然の脅威、群れを率いる判断と責任。
子供も大人も一緒にワクワク出来て、自然を大切にする気持ちが芽生える、素晴らしい映画体験だと感じました。