劇場公開日 2020年8月7日

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「シャイア・ラブーフが自身のつらい過去と向き合い立ち直っていくのをすぐそばで感じられる、そんなかけがえのない時間を共有できるすごい作品だった = 映画の魔法」ハニーボーイ よしさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5シャイア・ラブーフが自身のつらい過去と向き合い立ち直っていくのをすぐそばで感じられる、そんなかけがえのない時間を共有できるすごい作品だった = 映画の魔法

2020年7月30日
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自分自身の物語を作れ --- すごくよかった。このシャイア・ラブーフ脚本主演による自伝的物語は、彼の何もかもさらけ出すような献身と、また本作の製作・創作に打ち込み向き合っている間にそうした過去の体験と折り合いを付け傷が癒えていったのを作品越しに見て取れる、単なる映画を超えた特別な時間が流れていることで、観客の心も間違いなく揺さぶるであろう掛け替えのないものになっている。勇敢に深くまだ深くまで飛び込み理解し赦す。恐らく本作内で、自身でそのピエロであった父を演じたことも、彼の言動や心情を理解する助けになったろう。だからこそ理屈じゃないPTSDに対する映画セラピー。それだけユニークな着眼点と熱演に下支えされ裏打ちされた確かな熱量。これこそ映画の魔法だ。
やっぱり僕はシャイア・ラブーフが大好きだ。自分の中でもうブレない軸がしっかりと一本あるのを感じる(作品選びとかにしても)。スピルバーグの秘蔵っ子として若かりし頃から脚光を浴びてから暫くして、次第にパフォーマンスアーティストとしての側面や時に警察沙汰になるような奇行ばかりが取り沙汰されるようになったりと、不思議な立ち位置になり、出演作の規模感もこうした小規模インディーズ系になったものも、それも間違っていなかったし、彼がどうなろうと僕は彼を応援し続けるだろうと思える。ドル箱スターになるよりも大切なこと、本作を見て自分の中ですごく納得した。彼はやはりメジャー映画で感情を疎かにするよりも、極々私的であったり日常を切り取ったりする中で誰か一人にでも確かなものを届けたいと思っているのではないかと。消費されるよりも本当の意味で後年にまで残る作品に出ることで役者として意味あることを、例えば見知らぬどこかの誰かに手を差し伸べるようなことができれば…と願っているのではないか、なんて。
糞の中心の白い斑点 --- 1995年のシャイア・ラブーフ × 2005年のルーカス・ヘッジズ(現代名作ドラマに欠かせない存在)、そして彼ノーティス = シャイア・ラブーフの子供時代を演じる本作の顔ノア・ジュープの素晴らしい演技。本作が初監督作品とは思えぬアルマ・ハレル監督の距離感。冒頭の『トランスフォーマー』を彷彿とさせる撮影シーンから、時に張り裂けそうなほどのルーカス・ヘッジズの何もかもさらけ出すような叫び。人は誰でも誰かを恨んでいる、けどいずれはそれを取り除かないと。恨みを捨てないと命取りになるから。もう誰も腹を立てない、そうなりたかった。余韻がすごい。表現が表現である意味を見た気がした、そいつは決して廃れたりしないんだ。ボブ・ディランの曲が流れる中、実際の写真が映し出されるエンディングまで本当に良くて心温まる。君と張り合う気はないよ、俺が本当に望むのは君と友達になることさ

P.S. ルーカス・ヘッジズは本作にしてもレスリング選手役を演じた『WAVES』にしても最近は少し前までのイメージと打って変わり肉体が締まっている。あと、FKAツイッグスはやはり綺麗
6号室 COMBAT VETERAN
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