「【不愛想な一人暮らしの老年期を迎えた弱視の男に”良い風”が吹いてきた・・。”手書きの手紙”は人の心と心を緩やかに結び付けてくれる・・。】」ぶあいそうな手紙 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【不愛想な一人暮らしの老年期を迎えた弱視の男に”良い風”が吹いてきた・・。”手書きの手紙”は人の心と心を緩やかに結び付けてくれる・・。】
ー弱視のエルネストは、妻を早くに亡くし一人で暮らす78歳の男やもめ。息子ラミロから同居しようと言われ、自宅の内覧を渋々引き受けるが、家を売る気は無い。
週に数度、ハウスクリーナーの女性が来てくれるが、台所は散らかり放題。
だが、書斎には多くの本と数枚のレコードが置かれ、彼の知性を物語る。
ある日、彼はひょんなことから、ビアという奔放で明るい女性と知り合いになり、一緒に犬の散歩に行ったり、食事をしたり、少しづつ距離を縮めていく。-
■今作で印象的且つ沁みた点
1.且つての友人オラシオの死を知らせる友人の妻ルシアからの手紙をビアに頼んで読んで貰うシーン。そして、タイプライターで返信をしようとするエルネストを制して、ビアが言った言葉。
”堅苦しいよ・・。私が、手紙を書くよ・・。”と言って渋るエルネストの口述筆記をするシーン。手紙の書き出しにも”イロイロとアドバイス”をするビア。
ーエルネストのお金をくすねちゃったりするが、教養のある心優しき女性だと分かる。-
2.そして、ルシアからの手紙に書かれていた言葉の数々。喜ぶ、エルネスト。
ーもしかして・・。-
3.ビアにもイロイロと事情があるようで、ある日、目に痣を付くって、理由を聞くと”自転車で転んだ・・”
4.エルネストとビアが交流を深める数々のシーンでは
・夜、若者たちと詩を路上で詠うシーン
・その後、ビアを追ってきた無骨な男をエルネストが玩具のピストルで追い払うシーン
・滅多に会えない孫にビアのアイディアで、エルネストの動画を撮影するシーン
-言葉遣いを”固い”と又もビアに直されるエルネストだが、恥ずかしくも、嬉しそうである。ー
・ビアからルシアとの関係を鋭く突っ込まれ、照れ臭そうに昔の関係を告白するシーン
が、特に良い。
5.隣人、ハビエルの存在も良い。口は悪いが、お互いを気遣う関係性が垣間見える数々のシーン。
ー新聞が取られていないと心配するところなど・・-
が、ハビエルの妻がある日倒れ、ハビエルが子供のところに行くシーン。二人で固く抱擁を交わすシーン。
ーハビエルが寂しそうに呟く・・。”老いては子に従えだ・・”-
6.ナカナカ上手くコミュニケーションが取れない息子にビアに書いて貰った手紙に書かれていた事。それを一人で読むラミロの少し背を丸めた姿。
-ラミロ、あれは涙ぐむだろう・・。手紙って良いよなあ・・。-
<そして、”良い風”に追い立てられるように、エルネストは”ある人”に会いに旅に出る・・。
ビアに手紙の書き方の指導を受けるうちに、自分の人生に”新しい風”を自ら吹き込んだエルネストの姿にも涙するあのラストシーン。
手書きの手紙って、魔法の力を持つのだろうなあ・・。
人生は、これからだね、エルネスト・・。>