劇場公開日 2020年9月4日

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「この12年、スケボーを滑走させ大人になりゆく少年たちの姿を見つめた秀作ドキュメンタリー」行き止まりの世界に生まれて 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5この12年、スケボーを滑走させ大人になりゆく少年たちの姿を見つめた秀作ドキュメンタリー

2020年8月26日
PCから投稿

賞レースでも話題になったドキュメンタリー。その冒頭、まるでスケートボード映画が始まったように思えた私だが、描写を重ねるごとに、これがスケボーカルチャーを視座に、少年たちの成長や社会の変移に焦点をあてたクロニクルであることに納得がいった。そもそもスケボーは低所得者層の多い地域でも若者の間で広く根付き、彼らが絆を深めるきっかけとなりうる文化。個々のグループにはハンディカムで自分たちの技を記録する撮影担当もいたりして、こうやって残された映像記録が本作を構成する重要な素材となっている。あの頃、各々のメンバーは一体どんな家庭の悩みや問題を抱えていたのか。そして今、どんな思いを抱えて歳を重ねているのか。産業の錆び付いた故郷へ思いを馳せながら、かつてスケボーを走らせハンディカムを手にしていた映画監督がエモーショナルに紡ぎだす自分たちの記録。彼らに寄り添いながらこの10年の月日を共に噛みしめる自分がいた。

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牛津厚信