「美術館」モルエラニの霧の中 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
美術館
切り取られるフレームが美しかった。
室蘭という街を訪れた事がないので、ロケ地以外の関連性が分からずにいる。監督は室蘭に在住らしいので、その街の何かにインスパイアされ、ああいう作風になったと思うのだが、そこは汲み取れない。
おそらくならば、室蘭を訪れた事がある人ならば、俺とは違う感想を持つのであろう。
物語的には混戦を極め、もはや筋を追いかけるような作りではないように思う。
考えたら負けなような気が、途中からしてた。
これは想像でしかないのだけども、4年に及ぶ撮影期間の間に監督の感性も変化していったのだと思われる。その時々、頭を過ぎるものが変わっていく。
良く言えば、新鮮な感性に殉じてる。
悪く言えば、一貫性のカケラもない。
でも、別にいいのだ。監督だから。
演出だから、芸術性に富んでてもいいのだ。
その感性に共鳴できれば、作品世界をより広く豊かに楽しめる作りになっているのであろう。
ただ、そうじゃない人には自己満足以外の何物でもないだろう…。
しょうがない。
芸術とはそういう物だ。
だが、こうも思う。
「別に表現方法に規則があるわけじゃなし、こんな作りがあってもいいんじゃないか」
観客に物語を強要せず、演者や作品のバックグランドを、好きなように埋めてくれ、と。
最終章に桜に向かい遺灰を蒔く老人がいる。
その背景を作中に散りばめた情報から、好きなように組み上げて欲しい。
答え合わせなどない。
あなたが組み上げた事。その事が紛れもない正解です、と。わかりやすい人物像などなくていい。そんな風に誰もカテゴライズされない。
人間は不可思議で、人生は摩訶不思議なのだ。
…は、言い過ぎかもしない。
コレを自由ととるか、不親切ととるかは、自分次第だ。
音楽とフレームは、とてもお気に入りだ。
レビューの表題を「風景画」にしようか迷った程だ。厳かな空気が漂い、静かなBGMが流れる美術館のような印象だ。
昨今には珍しい、明確な作家性を感じた作品でもあった。
なんかトンチンカンなレビューに着地した気もしなくはないが、まぁいいや。