世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカのレビュー・感想・評価
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足るを知る人でしょう
報酬の9割を貧しい人々、団体に寄付し自身も官邸ではなく郊外の農地で質素に暮らしていることから、貧しい大統領と揶揄されたのだろうが、彼は国連で「貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲望があり、いくらあっても満足しない人のことだ」と言っていました。彼は貧しいのではなく足るを知る人でしょう。
冒頭から葉巻を吸うエミール・クストリッツァ監督のインタビューを受ける柔和な老人、ホセ・ムヒカ、第40代ウルグアイ大統領。話しぶりから確固たる信念の人だとは伝わってきますが普通の好々爺然とうつります。
回想では人生について一番考えたのは牢獄の中だったと語ります、若いころ極左武装組織ツパマロスに加入、ゲリラ活動に加わり銀行強盗、大企業への数々の襲撃、誘拐にたずさわる中で、ムヒカは6発の銃弾を受け、4度の逮捕(そのうち2回は脱獄)を経験。元刑務所だったショッピングセンターを訪れ懐かしそうに笑っていたが、ムヒカは一般囚人や政治犯らと共同監禁され、そこで水分を与えられなかったため飲尿で渇きをしのいだらしい、壮絶な人生経験ですね、そんな犯罪者が大統領になれるウルグアイと言う国は不可思議な国。
政策は中道左派、驚いたのはマフィアへの資金源を断つためにマリファナの合法化を行ったそうだ。
人物としては興味深かったがドキュメンタリーとしては大統領退任までの1年間のみの映像の抜粋なのでやや単調に思えました。
畑に帰っていった大統領
評判は聞いていたが、
ムヒカは、ムショ帰り。
知られているその好々爺の面持ちからは想像も出来ないような 激しい闘争人生を歩んできた御仁だったのだ。
日本で、そして世界中で試みられてきた「社会主義革命」は、結局最後は内ゲバで内部崩壊をするか、あるいは社会主義指導者による一党独裁政権の恐怖政治に成り果ててしまったものだが、
ムヒカの夢は決してそういう生き方ではなかったようだ。
ムヒカは、最も貧しい人々を探し出して家を建て、野菜の苗を一緒に植えて農業学校を作り、住民と共に生きようとする最底辺を目指す人生を送った。
国が変わるためには金の力によってではなく文化の力で国民の心が変わらないといけないのだとも。
13年の獄中生活で学んだものが、釈放後の怨念を晴らす報復計画や革命分子としての君臨ではなく、ただただ自己抑制と奉仕の姿へと花開き、「投獄体験をさえ感謝する体験だった」とムヒカは言う。
そのあり得ない言葉が凄い。
謙虚で、自分を絶対視せず、向けられる批判をも謝辞をもって受け入れ、レッドカーペットを嫌って離任後すぐに畑に戻って行った男の人生だった。
お見事というほかない。
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まるで映画のようなドキュメンタリー作品でした。
世の中には変わり者の政治家がいるものです、
実は僕の住む長野県にもかつて変人の村長がいたのです。
南相木村の故 倉根七郎さん。
村境の「別れの松」の横に「不戦の像」を建立しました。
戦争中 出征兵士を見送ったその村境に「不戦の像」を建てることだけを公約に立候補して、建立後に退任されたと聞いています。
驚くべき「碑文」は「南相木村ホームページ不戦の像」で検索して読んでください。
自らに栄誉を帰さない、ひっそりと生きた“聖人”たちによってこの世というものは清められ、腐敗を免れてきているのかも知れませんね。
飾らない人柄と強い信念。
投獄されたりもありながら、極貧層の底上げをしようと奮闘した大統領。
セミリタイアしたサラリーマンでは!?と思うような質素な生活をしながら、学校建設するという活動もしていて、尊敬できるところしかない。
弱者に寄り添う政治家って日本にいるのだろうか。
今こそ世界の首脳が観て感じて欲しい
彼の壮絶な生きざまを思うと、あの笑顔がよりまぶしく暖かく見えてしまう。
公務の合間には農業に勤しみ、文字通り国民とともに歩んだ大統領の姿を、
今こそ世界の首脳が観て感じて欲しい。
信念のあるリーダー
ウルグアイ、南米の歴史、文化的背景を知っていれば、より深く考えられただろう。自分自身が貧しい家庭に育ち、ゲリラ活動に従事し、襲撃や誘拐など犯罪も犯すが、13年間投獄され、銃弾も負っている。社会主義を標榜し、アメリカなどの資本主義、個人主義とは一線を画しながらも、貧困率を下落させ、GDPを押し上げた。大麻も合法化し、麻薬組織の資金源を断った。自ら私財を投じ、自ら行動し、労を惜しまない。数々の名言はそんな彼の生い立ちから、心の中から発せられる言葉だろう。人は一人では生きられない、だから豊かさは共に分かち合うもの、豊かさは経済では得られず、文化、人々の価値観からくるもの。主義思想は自分たちの暮らす日本とは全く異なるが、彼の信念、国に尽くす献身性、人々を動かすリーダーシップは国のトップに相応しい。彼への批判も当然あるだろうが、国民から愛された政治家というのは羨ましい。
日本の首相じゃ想像できない。
全くの事前知識なしで観賞しました。
人懐っこい笑顔に立ち居振る舞いが
人を惹きつける魅力があるのだろうと第一印象。
これまでの人生は、人懐っこいとはかけ離れた闘いの人生。
自分の報酬を世のために使うのは
パフォーマンスだけでは出来ないこと。
「ペペ」と愛称で呼ばれるような大統領なんて
日本の首相じゃ想像できないですよね。
【”世界で一番”私”を捨て、国に貢献したパワフルな大統領を、パワフルな映画を撮り続ける男が捉えた作品。】
■冒頭、ホセ・ムヒカ(ウルグアイの人々は、彼をペペと愛称で呼ぶ。)が、エミール・クストリッツァ監督に、マテ茶を勧めるシーンから、今作は始まる。
ムヒカのマテ茶の入れ方が、何だか可笑しく、神妙な表情のエミール・クストリッツァ監督も・・。
そして、二人には笑みが零れ、ドキュメンタリーは始まる。
・国民の貧困を無くすために大統領報酬の8-9割を寄付していたホセ・ムヒカ。そして、彼は貧困層のための住宅建設プロジェクトを始め、農業育成にも力を注いでいる。
・今作では、ムヒカの大統領としての仕事よりも、彼の若き時代の激しい左翼ゲリラ活動にフォーカスされる。
・更に、同年齢の男性から、突然浴びせられる口論、罵声もありのままに写され、貧困地区に住む子供たちの演奏する姿、任期を終え、闘争時代に恋に落ちた妻ルシアの口から語られるムヒカの魅力。
・エミール・クストリッツァ監督から”今までの人生で後悔した事は?”と問われ、”子供を持てなかった事”と即答するムヒカの寂しげな姿。
彼ら夫婦は13年にも及ぶ獄中生活を送ったため、子を持てなかったのだ。
その代わりに、ムヒカは多くの本を読み、膨大な知識を得、大統領になり実践していったのだ。
そして、彼が語る荒唐無稽とも思える”地球をよりよくするためのアイディアの数々・・。
<故郷を戦争により失った、エミール・クストリッツァ監督が、ホセ・ムヒカに惹かれた理由が良く分かる。
本作は、ムヒカの思想を”読み取る”ドキュメンタリー作品である。
今作に、興味をお持ちになった方は、是非、田部井一真監督の『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』を鑑賞する事をお勧めしたい。
あの有名な国連での消費主義社会を強烈に批判した名スピーチや、日本の大学生たちへのスピーチなど、琴線に響くムヒカの言葉が聴けます・・。>
すでに絵本等で有名な大統領なので映像で観る必要性は感じなかったので...
すでに絵本等で有名な大統領なので映像で観る必要性は感じなかったのですが、観ました。事前にこの大統領について理解していないと映画はほぼ理解できないと感じますが、絵本等読んでますので分かりました。絵本の方がより素敵でした。 個人の感覚です!
自己犠牲をいとわない
ウルグアイ第40代大統領ホセ・ムヒカのドキュメンタリー作品。見るからに優しそうな人柄で国民の立場に立って庶民の気持ちを理解できる貴重な大統領であると感じた。今まさに自己犠牲をいとわない一国のリーダーや政治家が求められているのではなかろうか。
2020-86
延期からの再開でやっとムヒカさんに会えました!
3月以来、2ヶ月ぶりにやっとミニシアターで映画を楽しめました!
ちょうど休業要請がはじまる3月末に封切り予定だった映画なだけに、再開したらすぐ行こうと楽しみにしてました。
名演小劇場にて、#世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・#ムヒカ。
ムヒカさんの日本人に向けたドキュメンタリー映画がもう1本予定されてたのに、そっちは未定になってしもうた。
ムヒカさんのことは今までYouTubeでインタビューやらブログ記事などでかじる程度に知り、その人柄とか優しさのイメージだけで、すごい大統領だと思ってましたが。
今日見た映画は、その生い立ちに迫るドキュメンタリー。
いかにこのような人物が南米ウルグアイに現れ、リーダーとなったのか、まったく世界の歴史に疎いので勉強にもなり、衝撃でもあり、納得したのだった。
その辺は映画をご覧になるか、気になる方は一度調べてみてください。
名台詞がいくつか出てくるんだけど。
善は悪にもなる、悪もまた善になる。
ムヒカさんだからこそいえる、それまでの人生から滲み出た珠玉の言葉だった。
あれだけ善くも悪い革命という犯罪をして、何度も撃たれて、何度もブタ箱にぶち込まれて、収容所を転々として、脱走して、逃げて襲撃して捕まっての人生で死んだり殺されなくてよかった。
本当に、カミさまに守られてるとしか思えない。
革命後の新しい世の中で、刑務所から出てきて大統領になるなど想像してなかったとはいえ、凄まじい人生を振り返ってもそうなるための善い人生だったと自覚してる。
それが、あの素晴らしい大統領を生み出す背景となったことを知った。
今の日本に必要なメッセージがたくさんある。
コロナの緊急事態で延期の運命となった上映が、解除されてこのタイミングで見れたことにも意味を感じる。
もう1本の、日本人へのメッセージを込めた映画も早く見たいな。
日本の政治家
ムヒカさんを観ていると、日本の政治家がいかに庶民感覚から乖離し、異常かが分かりました。とにかく、税金を独占しすぎてます。そもそも日本の政治家(自民党)は、親に資産がある2世議員3世議員ばかりだし、既得権益とべったりです。だから、お金持ち優遇の政策しかとらないし、コロナで困窮する国民を想像することができないのです。
世界一高額すぎると言われる日本の国会議員の年収を調べたら、例え居眠りしていたとしても、休んでいたとしても、こんなに貰っているのですね。
・給与 2200万
・文通費 1200万
・事務費 780万
・餅代、氷代 100万〜400万
コロナで世界的に露呈した日本の後進国ぶりと低成長は、政治が全ての原因なのだと思いますし、日本が良くなる方法も政治しかないと思います。だから、今作の様な作品が公開され、日本の政治家が異常だと気がつく人が増えてくれるのを願ってやみません。
昨今では、ムヒカ大統領が注目される以外にも、韓国の文大統領の支持率が高いこと、アメリカ大統領選でのサンダース支持率が若者中心に高まったりと、左翼や社会主義にレッテルをはらない新世代が増えてきてるのかと思いました。ムヒカ大統領の言うとおり、働かないで巨万の富を築くこと自体が、古い考えになってきているのではないでしょうか。新自由主義、つまり資本主義以外に何か創造ができないかという岐路に立たされているのだと思います。
お茶会の意味
ウルグアイの第40代大統領、ホセ・ムヒカを2014年~2015年にわたって取材したドキュメンタリー。
大統領としての給与の7割と、私財を投じて、貧民層に暮らす家を作ったり、農業などの仕事を作ったりという、私的活動がメインのお話。
誠意と信念でその活動をしているため、国会や国際会議には、一張羅のスーツをクリーニングに出して着回しているほど、貧乏だったりします。
所々に、過去、軍事政権下で圧政に反抗した地域ゲリラの長だったため、盗みや誘拐、脅迫、暴行の罪で十数年の監獄暮らしだったことが、インサートされます。
同世代の爺さん三人でお茶するシーンは、単なる老人会に見えて眠くもなります。
別々の地域のゲリラだった三人が、それぞれの組織への「人質」としてずっと同じ刑務所に入れられていて、お互いの女房より長くいたため会話することもないくらい理解しあっているということが、後半でわかるまで「なんだろこいつら」と悩んでしまいました。
まるでおとぎ話に出てくるような、愛に生きるお爺さん、という感じでまとめられておりました。
日本との関係性を描いた『ムヒカ』という作品があるらしいので、そちらも見て見ようと思いました。
☆☆★★★ 今、何故かクストリッツァが2年前に製作したドキュメンタ...
☆☆★★★
今、何故かクストリッツァが2年前に製作したドキュメンタリー映画が公開。
大体、クストリッツァのドキュメンタリーと言うと。ただ単にマラドーナの大ファンだから…ってだけで、会いたい!ハグしたい!サイン欲しい!ってだけの勢いだけで撮ってしまったドキュメンタリー映画『マラドーナ』の前歴があるだけに…。
…って事で。どうやら、ミュージシャンの肩書きも持つクストリッツァ。お気に入りのCDを探すついでに、前からちょっとだけ興味があったムヒカに向けてカメラを回してみた…ってだけの様な内容でしたね。
このドキュメンタリー映画ではホセ・ムヒカ本人がどんな人なのか?が分からないので…。
ホセ・ムヒカ伝説のスピーチ
https://youtu.be/F7vh7eQUtlw
同じスピーチ 子供の絵本用読み聞かせ版
https://youtu.be/Tm19sDQFMLM
池上彰との対談より
https://youtu.be/Wr72ClZ2Pcg
そして、奇妙なこの大統領に絶えず密着したジャーナリストの書いたムヒカ本の中から、幾つか人となりが垣間見える発言を。
全ての発言は、角川文庫 ホセ・ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領 より抜粋
色んなところからジャーナリストが自分に会いにやって来るのは、私がいつも彼らにフックを浴びせるからだと思う。それは私のせいじゃない。私はただ自分のありのままのを話し、好きなように生きているだけだ。信じられるのは、これからそれが変わってしまうということだ。世界各地で、こんなクソみたいなじいさんに関心が向けられていることがどうしても信じられないという連中は多い。私はそれについては特に何の努力もしていない。どこであろうと、私は好きなように生きているだけだ。自分は貧しくなんかない。貧しい人間というのは、いつもカネばかり追いかけ、それにとらわれている人間のことを言うのさ。
24ページより抜粋。
一般市民と統治者の間にアパルトヘイトが生じることがある。生活スタイルというのは一見取るに足らないことのように見えるが、そうじゃない。そこには政治家に対する不信感もある。国民は、大統領になるやつはみんな同じだと思っていて、最後には政治にものすごい不信感をもつようになるんだ。
〜 中略 〜
私がいつも言っているのは、「自分の考えに従って暮らそう。そうしなければ、暮らしぶりに合わせて物事を考えるようになってしまう」ということだ。これはいつの時代にも言えることだ。ひとが自分を正当化するために用いる言い訳の数は半端ない。このとんでもなく非効率な政府では、何でもかんでも正当と認められてしまうわけで。こういう連中は絵空事のような世界で暮らし、権力者におべっかを言っているだけのごますり連中に囲まれるようになるのさ。これは危険極まりない。だが、これと同じ状況を色んなところで見てきた。
101〜102ページより抜粋。
チャーチルは、そうしなければならないときにロシアのスターリンと同盟を結んだ。左派や右派という違いを越えて、国を率いる人物はプラグマティックでなければならない。常識もしっかりと持っていなければならない。常識こそが最良のイデオロギーだからだ。チャーチルでさえ、必要ならば「スターリンとともに」と言った。チャーチルは反共産主義だったのにもかかわらずだ。政治について学ぶには、こういった人物について研究しなければならない。
255ページより抜粋。
オバマは、アメリカの他の大統領と比べると急進左派だ。だから、言ってやったよ。「アフガニスタンから撤退しなさい」とね。オバマは笑っていた。彼には通訳がついていた。私も簡単な英語がわかるが、彼らが話すと何を言っているかまったく理解できない。
オバマにはカリスマ性があり。品があって立派だ。(2012年)あのサミットでは、アメリカを非難するスピーチがニ十以上あったが、オバマは我慢して聞いていた。私のスピーチが一番攻撃的でなかったと思う。オバマは辛抱強く聞いていたし、それはそれで尊敬すべき態度だと思う。私は彼に言ったんだ。「あなたはアメリカが私たちに与えられる最高の大統領です」とね。現在のアメリカの置かれた状況から考えると、オバマは最高の大統領だ。
256〜257ページより抜粋。
母親になることほど大きな喜びも苦しみもないと私は思う。女性は私たち男性より優れた存在だ。なぜなら命という贈り物を与えてくれるからだ。それ以上に大切なことは何もない。プチブルジョワに感化されて、子どもを産むことを忘れてはならない。年をとったときに、それがどれほど大切なことかに気づくからだ。(インタビュー相手に)お前はまだ若いからわからないかもしれないがね。もし神聖さというものが存在するのなら、それは年輪を重ねた女性に近いところにあると思う。
家庭に残って子どもの世話をするのは圧倒的に女性が多く、その割合は貧しい層にいくほど増える。彼女たちをもっと尊敬すべきだ。私は今流行りのフェミニズムに関心はないが、女性の力は信じている。女性はとても大切な存在で、そうゆう流行よりももっと価値があると思っている。
282〜283ページより抜粋。
時間は幸せになるために不可欠の要素だ。少なくともムヒカはそう信じている。インターネットでソーシャルネットワークに費やす時間や、テレビ画面を見ている時間ではない。これは時間の無駄以外の何ものではない。しかし残念ながら、そのような時間の使い方をする人が増えているのもまた事実だ。必要なのは、日々の最も基本的なことに時間を費やすこと。
〜中略〜
大統領として最後の訪問地(フィンランド)となるこの地で、「この国では人生というものが最も大切にされている」と、その夜のわすかな聴衆に向かってムヒカは囁いた。その逆の例として、人々が働くために生きているようなシンガポールや、人々が救いやより高位に到達するために死を選択するイスラム諸国の過激派を挙げた。確かに快適に暮らすためには働かなければならないが、何よりもまず人生を生きなければならないのだと、長い空の旅で疲れ切って頭がぼうっとしている一行に向かって力説した。
296〜297ページより抜粋。
今の時代には言葉があふれているが、中身がない。ムヒカがほとんど無価値だと思っているバーチャルなコミュニケーションで世界は飽和している。彼にとってソーシャルネットワークとは、真の意味での交流を避け、意味のない運動や数時間しか存続しないリーダーを生み出す手段でしかない。
〜中略〜
ムヒカは「今の状況は何も良いことにはつながらない。建設的というより破壊的だ」と断言した。「でも、昔はテレビについても同じことが言われていましたよ」と、私たちは疑問を投げかけてみた。
すると、「いや、私は別に現状を否定しているわけじゃない」と言い、インターネット時代を支持する理由を説明しようとした。「国境がなくなった」ことを強調するために、「ウルグアイ人の女の子が中国人の彼女になって、そいつにイタリアから服をプレゼントすることだってできる」と例を出した。
これはポジティブな変化だ。ネット上で距離が縮まるだけで知識の向上や相互理解に役立つ。これによって可能性が無限に生まれ、生命の水を届けてくれる水量の増した川のように情報が流れるのだとムヒカは分析する。
298〜299ページより抜粋。
今人類は、未だ存在しておらず。どの国も準備することができないグローバル・ガバナンスを必要としている。太平洋で起こった海抜の上昇やプラスチック投棄の問題は、どの政府も解決できていない。社会と政治の乖離は重大な問題だ。このままでは何も良いことにはつながらない。そこで、アウトサイダーが〝救世者〟として登場するわけだ。政治家といっても色々で、くずみたいなやつらもいるが、彼らは結局自分たちの所属政党のためにしか行動しない。歴史上も、このようにしてあまり評判の良くない指導者たちが現れた。右派の政治家はいつも道徳に訴えるようなスピーチをして、民衆の前に現れる。そして政権を握り、すべてをめちゃくちゃにするのさ。
304ページより抜粋。
人間の特徴のひとつは、生きていくために不可欠な空間を征服するということだ。アフリカに始まり、地球全体を征服した。人間は地球を手に入れ、もはや手放すことはできない。しかし、資本主義的文化では、進歩というものはもっと個人的なものだった。資本主義は人間の内部にあるエゴイズムを助長し、人々は自分のことばかり考えるようになる。
〜中略〜
エネルギーは無限にあるのだから、資源も無限にあるはずだ。私たちは、宇宙の広大さに比べればシラミみたいなものだが、人類は資源を維持するために科学を重視して、人類全体として動かなければならない。だが、それができていない、こういう状況が私たちの種を滅ぼす可能性がある。自然はこれまでに、私たちにその偉大さを証明してきた。恐竜でさえ消滅させられるのに。なぜ私たち人間を消滅させることなどできないと言えるのか?
314〜315ページより抜粋。
2020年4月1日 ヒューマントラストシネマ有楽町/シアター1
クストリッツァが監督したが食い足りない
ウルグアイの「世界で最も貧しい大統領」と称されたホセ・ムヒカを捉えたドキュメンタリー。「アンダーグラウンド」のエミール・クストリッツァが監督したとなれば観ないという選択肢はない。
収入の9割を貧しい人々のために寄付したという。お金がなくとも心豊かに暮らすムヒカ。「腹出過ぎだろう」と突っ込みたくなるが、若い時は極左のゲリラ組織で活動してたのですね。犯罪ではあるが『搾取』と称して金持ちから奪い貧しい者に分配する。
軍事政権時代に収監されていた十数年の間に今の自分が形成されたと、無駄ではなかったと。超プラス思考だ。
長年活動を共にしてきた奥さんとムヒカの若い頃から現在までポートレートが良かった。二人の絆を強く感じられる作品でもあった。
残念だが作品としては食い足りない。74分と尺も足りない。クストリッツァとムヒカが交わす笑顔を見れたことで良しとするか。
日本の政治家に観てもらいたい
ウルグアイ。南アメリカだというのはわかるがどこに位置しているかわからない。ホセ・ムヒカ元大統領のこともよく知らない。見た目優しく太ったおじいちゃんが元極左ゲリラの指導者として数々の修羅場を体験し、何度も収監され何度も銃弾をうけていて、脾臓と肺の一部がないというのだから壮絶な人生だ。そんなムヒカは富の再分配を目指して新自由主義に抵抗した。そのためアメリカを敵視、チェゲバラにシンパシーを感じてたのもよくわかる。タイトルの通りの清貧な生活をおくり、大統領時代にも郊外の農地に隣接した質素な住宅から旧式フォルクスワーゲンで通勤していたくらいだ。
この作品はドキュメンタリーでありながらカメラワークが素晴らしい。また音楽もいい。あとで調べたら監督はエミールクストリッツァ!巨匠じゃないすか!
一言一言が重みがある。もちろんムヒカに意を唱える人もいる。それに対し耳を塞ぐことはせずにとことん議論
する。失敗したことは失敗と潔く見とめる。どっかの国の宰相とは大違いだ。
奇しくも報道ステーションのコメンテーターの後藤謙次氏が最後の出演の際、政治と政治の劣化についてのコメントがあった。
全ての日本の政治家また政治家を目指す人に観てもらいたい。
ムヒカ元大統領の知識は必要
心に響く言葉を終始発しており、とても詩的なドキュメンタリー作品に感じた。
しかしこの作品はムヒカ元大統領の知識を持った上で鑑賞しないと作品をしっかり理解できないように思えた。
勝手ながらどこかの映画館の予告で一度観た際に生い立ちや大統領時代の時の事などをこの作品で描かれてるのかなと勝手な思い込みで鑑賞してしまった為、そのスタンスだとそういった描写は強く描かれていない為退屈に感じてしまう。
またタイトルの「世界でいちばん貧しい」というのはあまり作品と関係ないようにも感じた。
ムヒカ元大統領の言葉で1番心に響いたのが、優秀な指導者は次の優秀な指導者を育てる事だといった言葉。
この言葉はウルグアイ、そして日本に限らずどの国でも共通して今の時代最も必要な言葉だと感じた。
これはリーダーに限らず一個人にも言い換えられる事だと思う。
個性を尊重するがあまり、周囲を二の次三の次になってしまっている事を時折感じる事があるからこそ個人的には心に響いた。この言葉を大切にしたい。
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