「角度を変えると世界が変わる。」TENET テネット あふろざむらいさんの映画レビュー(感想・評価)
角度を変えると世界が変わる。
二回目。いまだによくわからない部分が多いがおもしろい。
基本的なところだが、本作で言及されている未来人、というのはどのくらいの未来のことを指しているのだろう。そして、彼らは本作の悪役であるセネターのような人物を何人も抱えているのだろうか。世界を滅ぼすという大役を、セネターひとりに託すということはないだろう。でも、未来人と契約した人物はセネターしか出てこない。
本作の重要な要素である「時間を逆行する」には、1日逆行するには1日かかるらしい。ずいぶん遠くの未来だとしたら、逆行してきてセネターに直接会うことはできないだろう。ということは、未来人はセネターとは作中で語られている「契約書」にすべての指示が書いてあったということなのか。その割にはセネターは逆行グッズを使いこなしていて、それはそれで不思議だ。
本作でみんなが奪い合う「アルゴリズム」という核弾頭みたいなものは、そもそも誰が手に入れていたものなのだろう。未来人がセネターに向けて逆行させて届けたものなんじゃないかと思うが、でも本作ではセネターが一生懸命それを集めている。ということは他の誰かが受け取っているものを、セネターが奪っているということだろうか。そうだとしたら、それは誰なのか。
いろいろと疑問がつきない作品ではあるが、テーマとしては、世界は角度を変えると全く違って見える、つまり、世界はひとつではない、というカント的なテーマなのではないかと思う。
ノーランはずっと時間についてこだわり続けていた。前作の「ダンケルク」でも時間を意識した演出がなされていた。そして「陸」「海」「空」で死の扱いの違いをみせた。彼の中では、「世界はひとつではない」という意識があるのだと思う。今回は時間の「順行」「逆行」という要素でその点を強調してみせた。とくに、同一人物が「順行」「逆行」の双方向から同じ場面にアクセスするところなどは、そういったテーマを伝えるにはわかりやすいやり方だと思う(なにが起こっているのかはわかりにくいが)。
それにしても非常におもしろい。また観ようと思う。