劇場公開日 2020年9月18日

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「過去からの贈り物」TENET テネット にゃろめさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0過去からの贈り物

2022年12月15日
PCから投稿

よく分からないから後でもう一回見ようという思いと、
どうせ分かっても面白さは変わらないから純粋に楽しもうという思いが、
共存して最終的に、分からなくても面白かったよ。
という映画でした。

未来人が過去に送ったテクノロジーにより、
それを受け取った現代人がそれを活用する。
その結果過去が変わり、未来ではそのテクノロジーは生まれない。
というような、めんどくさいタイムパラドックス理論を
言わせない力強さがこの映画にはある。

それは、
赤と青の色分け、
回転ドア、網入りガラスでの界壁、
酸素ボンベマスク・・・
など
複雑化したシナリオに
記号としての分かりやすさを用いりながらも、
あえてカメラワークや時間軸をずらし、
観客を混乱させるという
ノーラン監督の巧さとズルさも影響している。

そしてこの映画でヒシヒシと伝わってくるメッセージが
「今」の重要性。

先日、こんなことがあった。
10年ほど前に買った未読の本を開くと、
間に1万円札が挟まっていた。
ふと、思い出した。たしか10万円ほどのあぶく銭があったとき、
家のあちこちに1万円札を隠した。
過去のオレから未来のオレへの贈り物。
記憶をたどり、もう3万円見つけたところで探すのをやめた。
得しているのか損しているのか分からない、この贈り物。

未来は過去の結果でしかなく、
その刹那、現在はすでに過去になっていく。
それでも確実に現在は前に進み続けるから、
重要なのは「今」なのだ。

と、2020年の大変な世の中で上映を決意した
ノーラン監督(を含む関係者)を称賛したい。

にゃろめ