「ダメな方のノーラン映画」TENET テネット ジョイ☮ JOY86式。さんの映画レビュー(感想・評価)
ダメな方のノーラン映画
ノーラン映画は数あれど、これほど独りよがりな作品は始めてだ。
インターステラー、インセプション、これまでにも時空間をモチーフにしたノーラン作品は多々あった。
しかしこれらはどれも、その映画的構造を観客に楽しませつつ設定を飲み込ませる努力がなされていた。
だから難解な設定に辟易する事なく、むしろスリリングに楽しみつつ作品世界に没入する事ができた。
本作はこれらが一切なされていない。
だから視聴者はどこまでも置いてけぼりになるし、キャラクターへの感情移入が最後までできない。
かと言って2回目を見て更に理解を深めたくなるかというと、全くそんな事もない。
何故なら何度見てもストーリー及び設定上の矛盾点が多々ある事が既に証明されているからだ。
本作は時間を逆行したアクションをCGに頼らず撮る事に特化した映画だ。
上で触れた設定はそれらを映画内で説得力を持たせる為の装置に過ぎない。
では肝心の逆行アクションはどうだったか?
これが全く面白くないのだ。
それどころか、見ていて生理的に不快だった。
巻き戻しした映像をいつまでも見させられていて気持ち良いわけがない。マトリックスのスローモーションやワイヤーアクションのような気持ち良さは一切無いのだ。
技術的には素晴らしくても、それがアクションとして魅力的でないのではアクション映画としての意味もない。
更にこのアクションを成立させる為のストーリーも矛盾に溢れ退屈だ。
タイムサスペンスとしてダンケルクは非常に素晴らしかっただけに残念でならない。