劇場公開日 2020年9月18日

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「完璧すぎる型」TENET テネット andhyphenさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5完璧すぎる型

2020年10月9日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

IMAXで鑑賞。解説やネタバレは読まずに挑んだ。
まず、面白かったや分からなかった以前に酔った。カーチェイスのシーンから相当危険な感じがしていたが、逆行のシーンでもう私の自律神経は破壊された。その為、恐らくいちばん面白い筈の後半にかけて相当グロッキーであった。私が弱すぎるのかもしれないが...。何回も観ないと分からないのかしれないが、私は体質的に恐らく二度と観られないと思う。
そんな感じだった為、IMAXじゃない方が寧ろ良かったのかもしれないというくらい映像の凄さに目がいかなかった。ただ実際に逆行したら私の三半規管保たないだろうな、とは身を持って感じた。
肝心の物語に関しては...難解なのは設定や仕込みであって、それを引っぺがした瞬間超絶シンプルな物語になるよな、とは感じた。何よりケネス・ブラナー演じる悪役のセイターが割とストレートに悪で、いや悪としては良いけどその設定だったらもうちょっと深掘りできたのでは(仕込みが迂遠だよな)とか思うし、ジョン・デヴィッド・ワシントンは...あれだけの役割を負っているのにどことなく存在感があるようでないというか...。それは彼が「何も知らない」からなのかもしれないが。一方ロバート・パティンソンには痺れた。なぜだろう。
エリザベス・デビッキのヒロインは型に嵌りすぎているとも感じる。そう、これだけ複雑な世界観にあってもなんだか人物は皆型に嵌っていてそこから出られていない感じはした。名もなき男とニールの関係性でさえもその枠を抜けない。きっちりと嵌め込まれた物語の枠の中に設定も人物も完璧に配置されている感じ。いうなれば「遊びがない」。
物語全編に仕掛けられた謎や伏線には正直あまり興味がない。ネットには考察や解説が乱立しているが、私個人は「1回観ただけでは終われない映画」というのはどうなのか、という思いが根底にあり、恐らくそんなことは創ったノーランだって分かりきっていて敢えて好きにやっているのではないかと感じる。そこに乗るか乗らないかは鑑賞者次第であって、私は乗らないな、というだけの話だ。直感で観て感じたままでいいかな、という。
個人的にはよくできたエンタテインメントであり、先鋭的な映像表現であるとは思うが、逆にいうとそれ以上のものは感じなかった、というのが本音。画面酔いのせいかもしれない。

andhyphen