「逆回し風アクションや眼を見張るロケ撮影などのも楽しいノーラン映画の大集成的作品」TENET テネット ミラーズさんの映画レビュー(感想・評価)
逆回し風アクションや眼を見張るロケ撮影などのも楽しいノーラン映画の大集成的作品
時間を遡行して来る悪の組織と対決するエージェント達の活躍と聞くと、いかにもSF的な設定で、最新の特殊効果バリバリの画面を思い浮かべるが、監督のクリストファー・ノーランは、出来る限りCGや特撮に頼らずに、古典的なフイルム逆回し撮影やロケとセットを多用してチープな雰囲気を出さずに、リアルでスケールのある映像を構築しているところは、凄いの一言。
特に後半の敵アジトを襲撃する場面は、大量のエキストラとヘリを駆使して密度の高い映像を実現していて迫力もあり、正直『ダンケルク』よりも大きなスケールを感じるところもある。
勿論、逆回し風に俳優が演じていシーンもあるらしいが、それも含めてノーランの過去の作品で使った手法を上手く画面に昇華しているので、とても新鮮に感じる。
一見複雑で難解なストーリーに感じるが、大筋はシンプルなスパイ活劇とバディ物の要素が入っている娯楽作品で、時系列を編集で複雑に弄っている訳ではないので、思ったより見易いと思う。
以前のノーラン映画は、アクションシーンに余り工夫と迫力が無く淡白な印象だったが、今作は音響も含めて見応えがあり進化している。
主演のジョン・デビッド・ワシントンもシャープな動きと力強い雰囲気でこの大役を見事に演じている。個人的には、ヒゲの無い顔も披露して欲しかったが。
頼りになる相棒をロバート・パディントンも好演していて、裏を知り尽くしている感じを上手く醸し出ている。
悪役のケネス・ブラナーも流石の存在感。
一番気になるところは、007映画が大好きでリスペクトしているノーラン監督だが、本家にあるゴージャス感やユーモアや皮肉なところが殆どなくて、真面目で堅い印象が映画に若干の重苦しさを与えていると思う。
時間逆行の設定も割と穴があると思うが、デジタル機器嫌いのノーランらしくスマホなどは活用されないのも現代劇だとちょっと無理がある。
それでも見所が盛りだくさんで、逆回し風アクションや眼を見張るロケ撮影などのも素晴らしい作品で、出来る限りIMAX方式の上映で観て欲しいノーラン映画の大集成的作品でオススメ。
ちなみに今回は通常のIMAXレーザーにて鑑賞しましたが、次は池袋のIMAXレーザーGTで観る予定。