劇場公開日 2020年9月18日

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「反芻して楽しむスルメ映画、パンフ必読」TENET テネット ニコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0反芻して楽しむスルメ映画、パンフ必読

2020年9月20日
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鑑賞方法:映画館

【9/23追記】
 2回目鑑賞。初見では情報量に溺れて取りこぼしていたシーンを、頭が整理された状態で取り込むことが出来た。ここで後に繋がる描写があったんだなあ、この映像はこういう意味だったのか、といったことを自分の目で確認し、どんどん霧が晴れてゆくような楽しさを味わえた。
 後日配信などで見直すのもいいが、初見の記憶が新しいうちの方がアハ体験が出来そうだ。
 また、発売されたメイキングブックを読んだが、撮影の裏話は詳細で面白いものの、物語の進行の難解な部分に関する説明はあまりない。公式資料ではパンフレットが親切でお得感がある。

【9/20】
 公開日前にIMAXシアターで、オープニングを6分間流すティーザー予告を見た。設定の説明もないのに最後まで見入ってしまう緊迫感みなぎる映像。
 ノーランか…初見では分からない設定と展開の…そんなちょっと面倒臭くなる気持ちを力技でねじ伏せるようなスタイリッシュで濃密なルックスとサウンド。
 公開後映画館で、両方の意味で想像以上のものが見られた。期待以上の斬新な映像表現、それと予想以上の分からなさ(汗)。
 一番混乱する部分は、順行する時間軸で動く人物と逆行する軸で動く人物が交錯するところだろう。しかも後半に行くほどその複雑さと展開スピードが増してゆく。「何故?」と考え込む暇はない。
 とりあえず初見では、大筋のストーリー、主要な登場人物の行動の目的に着目しながら、分からない部分に拘泥し過ぎず見るのがよいかも知れない。物理学に造詣の深い人でもない限り、初見で分からない点が残るのが恥ずかしい作品ではないし、分かる範囲で楽しむのがある意味賢い観方だと思う。
 CGを極力使わず撮ったという逆行する動きでのアクションやカーチェイス、ジェット機の衝突シーン、オスロやムンバイ、シベリアへと刻々と変わる舞台、身長190cmのエリザベス・デビッキの異次元のスタイルと美しさなど、ビジュアルだけ追って行っても単純に楽しめる要素はたくさんある。
 そして鑑賞後にパンフレット(日本公開にあたり科学監修をした山崎詩郎氏の図解付き解説が読める)やネタバレレビューで復習をする。興味が高じれば限定版のメイキングブックも発売されている。色々な発見をして、多分もう一度観に行ってしまう。タイトルが象徴するように、物語の流れは円環になっている。言わば伏線だらけのようなものなので、2回目の鑑賞がより楽しめることは間違いない。
 マニアックで複雑な設定を理屈抜きに度肝を抜くIMAX映像で見せ、複数回鑑賞を誘発する。刺激的な物語として、そして興行的にも強い引力を持った作品。

ニコ