劇場公開日 2020年9月18日

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「こんがらがる愉悦」TENET テネット aMacleanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0こんがらがる愉悦

2020年9月19日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

21世期のキューブリック、クリストファー・ノーラン話題の作品。映像の美しさ、不可思議さは、期待を裏切らない。

内容は「インセプション」のモチーフと、「インターステラー」のパラドックス、「ダンケルク」の迫力を足して円周率?で割った感じ。初見では全てを把握するのは困難。この辺りがノーランの面倒くささなのだけど、この映像は映画館の大画面で観たいし、内容の深掘りは家でシーンを手動で移動して確認しながら観たいし。いっそのことスクリーン貸し切りで、自在に巻き戻ししながら観れたらいいのに。

最初は何がなんだかよくわからないまま、スパイアクションが展開され、その後すぐにややこしい時間の逆行アイテムが披露される。撃った弾丸は拳銃に戻るわけだ。こちらの時間軸では時間は一定方向に進むのだが、あちらから来た物体は"逆行"している。これが本作の基本設定だ。そうしたアイテムが研究所で保管されていたけど、これらは時間が経てば加工前の金属や火薬などに分解されて、原材料になっちゃうんじゃないのだろうか。

なんて余計な心配はさておき、しっかり観てないと(しっかり観てても?)何がどちらの時間軸かわからなくなり、大混乱となる。普通の物語のように、伏線の因果関係があるという前提が微妙にズラされるので、頭の中が混線するのだ。そこがまた楽しいのだけど。
ノーランの狙いもこの辺だろうと思うが、悔しいかなどっぷりと罠にハマってしまった。始まりから終わりに向かう時間と、終わりから始まりに戻る時間を噛み砕きたいけど、現実の映画はエンディングへ一直線。後戻りはしない。ストーリーを追うだけなら、基本的に主人公は常に同じ方向の時間軸なので、そこを足場として見れば、追いつき易いのではなかろうか。

主演はジョンDワシントン(デンゼル・ワシントンの息子)。「ブラッククランズマン」のチャラい感じとうって変って、スーパー諜報員。落ち着いた感じが良いですね。ケネス・プラナーは「ダンケルク」に続いて重要な役所で、画面を引き締めます。昨年の「イエスタディ」に主演したヒメーシュ・パテルも少し出てます。人種も国籍もさまざまで、ここも今のハリウッドの世相を象徴していて好感持てますね。

まとめると「インセプション」同様、やってくれたなというのが率直な感想。もう一度映画館で鑑賞した上で、配信やブルーレイの発売を待ち、細かいところを補完したくなる。ノーラン教への洗脳要素が満載の作品だ。ノーランはきっと、映像で脳内のどこかを刺激して、常習性のある麻薬物質を出させる秘密を握ってるに違いない。

すべてが「TENET」というタイトルに集約されているのが、また心憎い。邦題でカタカナ表記されると台無しだけど。

AMaclean