「何度も見に行ってこそ真の面白さがわかるかな…。」TENET テネット yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
何度も見に行ってこそ真の面白さがわかるかな…。
今年で32本目。午後有給で色々用事を済ませてから見に行きました。
ストーリーが難解な上に、初日ということもあるので、かなり抑えめに書きます(特定の物理用語、定理などをうっかり出すと、わかる方には思わぬネタバレになりかねない)
ストーリーが非常に難解でこれは本当に難しいです。この難しさを増しているのは下記の2つではないかな、と思います。
1.極めて高度な物理(数理物理)の知識が要求される
2.上記には「時間のトリック」が含まれるが、その理論的背景を理解した上で、さらに脳内でも処理できないとストーリーにおいて行かれる(ただ単に面白かった、だけになってしまう)
…の2つが不可分に絡み合っていて、しかも切り離せないという「2つのハードル」を超えないと「まず何もって意味が分からない」になっちゃう点です。
この「時間のトリック」については古い時代から色々なバリエーションがあり、日本ではそれこそ、ドラえもんのタイムマシンのような初歩的なものまであるわけですが、そんな「子供だまし」みたいなお話のレベルではなく(PROレビューの方も書かれている通り)、学部レベルの物理が背景に隠れており、それをまず理解しないといけない上、理解してもこの「時間のトリック」であっちこっち話が飛ぶので、これはもう、何度も何度も見に行って何とか理解できるかな…レベルです。
この監督の方、どうも物理ネタが好きなようで、この作品の前にも過去作品を放送していたのですが(コロナ渦の問題で映画が足りないのも一因?)、それら過去作品(インセプション等)に比べて、さらに難易度アップという感じです。
評価は下記0.3で4.5にしました。
0.3 … 正直、本当にこれはストーリーを追うのも大変なほど難しいです。PROレビューの方も書かれていた通り、映画という娯楽の中ではもう要求される知識レベルが上限いっぱいかと思います(これ以上難しくするともうそれこそ誰もわからなくなる)。
理系の学部卒というレベルではきつく(理系共通の教養科目の物理・数学ではどうにも足りない)、物理専攻か数理物理専攻か…で何とか足りるかなというレベルです。
ところが、今年の理系ネタバリバリな映画の例として言える「エジソンズ・ゲーム」の場合、タイトルからして「物理ネタだな」とわかるので、予習してからでも行けるのですが(事実、関連学会の後援推薦もあった)、この映画はそこがまず読めないので、多くの方のレビューを参考に予習するならするでいかないと、本当に???になりかねない点です。
下手をすると、「CGきれいだったなぁ」「名監督の映画だなぁ」で終わりかねない点で、かといって理解するために3回も4回も見に行くのも費用がかかるので、そうそうもできず、評価が極端に分かれそうな気がします。
すると、「これはちょっと(理系の方、それも物理・数理物理に通じている方が少ない、という日本の実情を考えると)、何だなんだか…」となっても仕方なし、その結果「言っていることが意味がわからない」→「ストーリーについていけない」のコンボを食らう点でしょうね。
参考までに、下記予習したほうが良いかなと思われる点を挙げておきます。
(超重要) 基礎物理、物理1など教科書の「量子力学」などのページ
※ 教科書は市販されていないので、高校のお子さんがいるご家庭では借りてでも読んでいいと思います。
(重要) エントロピー、素粒子・反粒子論(学部教養ではやらない?)
(やや重要) 測度論(数学)、行列など
※ 「やや重要」は直接出ないが、背景にある知識を理解するために必要