「さほど見処のある作品ではなかった」TENET テネット 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
さほど見処のある作品ではなかった
「インセプション」もそうだったがクリストファー・ノーラン監督はどうも時空間を移動させる物語が大好きなようで、本作品でも時間を行ったり来たりする。時間を相対化しているのだ。ならば善悪についても相対的に設定してもよさそうだが、そうなると観客は主人公の側に立って安心して観ていることが出来なくなり、物語自体が意味不明になってしまう。流石にそこまではできなかったようだ。
しかし時間と時間のベクトルを相対化することにのみ注力した結果、世界観は浅くて陳腐なものになってしまった。これでは水戸黄門と同じ単なる勧善懲悪の物語である。好きな人は大勢いるだろうが、感銘を受けるジャンルではない。
「インセプション」と同じように、世界観や善悪は考えないで時空間を行ったり来たりのアクションを楽しむのがいいということになるが、既に「インセプション」を観ている者には、似たような物語を設定を変えて見せられているだけに思えてくる。
アクションも荒唐無稽だった「インセプション」に劣るし、飽きはしないがさほど見処のある作品でもなかった。ハリウッドのB級大作の典型みたいな映画である。
コメントする