「製作期間の10年、作中時間の10年…」るろうに剣心 最終章 The Beginning akkie246さんの映画レビュー(感想・評価)
製作期間の10年、作中時間の10年…
FinalとBiginingこの二本をスイッチするのはものすごく知力と体力がいる。この二本の間には、三本の野心剥き出しのサムライアクション映画がはさまれる。
コロナで人類が鬱々としている現在、この二本の大作を日本で公開できたのは、映画の神様に祝福されているからだろう。監督、製作陣、関係者の皆さんのはたらきももちろん大きくプラスに働いている。
漫画原作フィクションではあるものの、時期的に現在放映中の大河ドラマ「青天を-」の裏の歴史を垣間見せるつくりになっていることも面白い。明治時代が幕を開けるために、どれだけの血が流れたのかというお話。暗殺やテロや陰謀や戦争があり、人類がまだ宇宙へ行ってなく、地球規模でものごとを考えられなかった時代があった。
もし、昨年の公開であれば、「鬼滅の刃」と興行成績を争うことになったはずだが、鬼滅の刃フィーバーがとりあえず落ち着いている現在にこの「るろうに」の10年間を一気に投入できたのほ、るろうにファミリーにとって最大の幸運であったのかもしれない。それとも「鬼滅」という、よりフィクション性の高いアニメーションと競うべきだったのか?
いや、「鬼滅」フィーバーのあとの「るろうに」最終章の堂々公開であったがゆえに大きく燃え尽きられたのだと思う。
つねに逆境を味方につけるという大友啓史の生き方がここにきて結実したのだと思うと、感動する。
江戸時代末期。倒幕と新政府樹立とその後の数年。
桂小五郎をリーダーとする長州藩の運命ともにあった抜刀斎の人生。
それは、人を殺めて歴史を切り開くしかなかった幕末の動乱の時代から、第二次世界大戦と呼ばれる日中戦争、日米戦争をへて現代に至る近代日本史の始まりの始まりである。
漫画原作フィクションであるが故に、自由である。
斎藤一や、新撰組や、桂小五郎など実在の人物を見れることはスリリングだ。
あくまでも「映画・るろうに」における斎藤一であり、江口洋介演じる斎藤一なのだが、無名の青年→緋村抜刀斎→緋村剣心と変遷してゆくこの物語の主人公にとっての最大のライバルであり、かつ盟友とも言えるのかもしれない。江口洋介をシリーズの最初に起用できたこと、佐藤健のキャリアの初期に大友啓史の「剣心」になったこともこのシリーズの成功の鍵のひとつだと思う。(もちろんアクション監督谷垣氏の起用も。)
この時代にしか生まれえぬ傑作だと思う。
漫画原作フィクションというハンディを背負いながら、日本近代史を振り返らせるための強力な起爆装置になりうるかもしれない。