「【”剣心が「不殺の誓い」を立てた哀しき理由” 静的トーンで描いた若き剣心の悲恋が心に沁みる。現代邦画の金字塔シリーズの掉尾を飾る、抒情性溢れる作品。】」るろうに剣心 最終章 The Beginning NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”剣心が「不殺の誓い」を立てた哀しき理由” 静的トーンで描いた若き剣心の悲恋が心に沁みる。現代邦画の金字塔シリーズの掉尾を飾る、抒情性溢れる作品。】
ー 大友啓史監督が、現代邦画の金字塔と言っても良い「るろうに剣心」シリーズを、このような静的で、抒情性溢れる哀しくも美しい作品で締めくくるとは・・。見事である。
第一作の前半、剣心が京都見回り組の婚約間近の武士(第一作も今作も窪田正孝さんが演じている。)を殺めたシーンは、良く覚えている。
”死ねない・・、大切な人がいるから・・、”
と言いながら、何度も剣心の刃を身に受けながらも、立ち向かっていった武士の姿。
そして、翌朝、亡骸に縋りつくように抱き着く和服女性の姿。
あのシーンを、このラスト作と連関させてきたとは・・。ー
<Caution! 以下、一部、内容に触れています。>
■感想(良かった点)
1.今作は第1作から4作までの大きな魅力であった谷垣アクションを、やや抑制し、剣心が”不殺の誓い”を立てる所以を、静的なトーンで描いている点。
2.特に、雪代巴(有村架純)の剣心に対する思いが変容して行く様を、有村さんが微妙な表情の変化で演じている点。
ー 有村架純さん、素敵な演技派女優さんになられていくなあ・・。ー
3.剣心の ”新たな時代を切り拓くために・・”
という大義の元、多くの佐幕派の人を殺めているが故に、心が晴れない日々を過ごす中、巴が現れ、剣心の心を解きほぐしていくシーン。
ー それには、”理由”があるのだが、一緒に暮らすことになり、巴は剣心の”純粋な心”に惹かれていったのであろう・・。ー
4.登場人物の所作の美しさ
・剣心の食事の仕方。
・巴が日記を背筋をピンと伸ばして書く姿。崩し文字の美しさ・・。
5.新たな登場人物を演じた俳優さんたちの魅力
・高杉晋作を演じた、安藤政信さんを筆頭に、(もっと、映画に出て欲しい!)
桂小五郎を演じた高橋一生さん(イメージドンピシャ)、沖田総司を演じた村上虹郎など、”もっと、出演時間を長く!”と思ったが、今作は、”剣心と巴の物語”だから、我慢。
<雪舞う中の、辰巳との、閃光弾により目が一時的に見えなくなった剣心との一騎打ち。
そして、起こってしまった悲劇。
私は、瀕死の巴が、剣心の頬の縦傷を”十字傷”にしたのは、
”もう、これ以上人を殺めないで・・”
という愛した人へ最期に遺した、メッセージなのだろうと思った・・。>
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【「るろうに剣心」全5作の魅力(私見)】
1.今作と同じ、動乱の幕末期を舞台にした「龍馬伝」の哀切でダイナミクス溢れるトーンを引き継いだ大友啓史監督の脚本と、それまでの時代劇とは一線を画したアクションを造り上げた谷垣健治アクション監督の力量、及び佐藤直紀が担当した同じく「龍馬伝」で奏でられた哀感と抒情性溢れる音楽が構築する、独特の世界観。
2.剣心を演じた佐藤健の常人離れした、運動神経と動きの速さ
そして、今作を観ても、第一作と変わらない動きが出来る役者としての矜持と節制。
更に言えば、静と動の使い分け方。
眼の演技。
凄い役者さんである・・。
3.剣心と敵対する濃すぎるキャラクター達と演者達
・香川照之の怪演も後押ししたガトリングガンを打ちまくる武田観柳
・吉川晃司の”眼が凄かった”人の心を意のままにする鵜堂刃衛
・短刀使いの名手、外印(綾野剛)の早業、身体の動き
・全身を焼かれながら、生き延びた志々雄真実。
そして、全身包帯で顔の識別すら困難であったにも関わらず、その圧倒的な”声”で志々雄を演じきった藤原達也
・幼き頃、妾の子として虐待されたがゆえに、不可思議な笑みを浮かべ、片足で”トーン、トーン”と独特のリズムを取りながら繰り出す剣の速さに驚いた瀬田宗次郎を演じた神木隆之介
・亡き姉、巴の仇を取るために上海裏社会のトップに上り詰め、日本にやって来た雪代縁を演じた新田真剣佑
ー 凄い陣容とキャラクター設定であった・・。小物を入れたら、書ききれません・・。
どの、キャラクターも設定が完成されており、見事でありました・・。ー
4.剣心を見守り、時に共に戦う多くの友たち
・神谷道場を女手一つで守る神谷薫(武井咲)
・直情的おバカだが、漢気があるデカすぎる斬馬刀を振り回す相楽左之助(青木崇高)
ー 個人的に、好きな男である。ー
・医者の名家の生き残りで、一見ツンデレだが、情に厚く、薫を影で支える高荷恵(蒼井優)
ー このキャラクター達の存在が、作品群のクォリティを支えているのは、間違いない。ー
5.剣心と、微妙な関係性を持った人たち
・元新選組三番隊隊長だった、斎藤一(江口洋介)
ー 全5作品に出演。牙突のポーズが、格好良い。咥え煙草も・・。ー
・幕府の隠密御庭番衆の長、翁(田中泯:余りの技の速さに驚嘆したモノである。流石現役ダンサー&自給自足の農家。漢としての顔の凄み。憧れである・・。)
及び四之森蒼紫(伊勢谷友介)、巻町操(土屋太鳳)
ー 豪華だなあ・・。このキャラクターたちも、設定が絶妙だったなあ・・。ー
<動乱の幕末期を舞台にした「るろうに剣心」という”平成から令和にかけて製作された”現代邦画界に燦然と輝く作品群を製作した大友啓史監督、谷垣健治アクション監督(この人が居なければ、このシリーズは成り立っていなかったと私は思っている。)始め多くの映画制作陣の方々。
そして、佐藤健さんを筆頭に、今シリーズに出演された多くの俳優さん達に、敬意を表します。
10年もの長きに亘り、楽しませて頂きました。有難うございました。>
朝5時から長い1日、お疲れ様でした〜。
健くんの食事シーン。農村隠れ家にて「美味しそうに食べる」と巴が言う場面の直前、健くんの一口が結構大きかったので
「モグモグ時間が長いなw
次の台詞までに間に合うのかな?」と余計な心配しつつ口元に注目してしまいましたw