マヤの秘密のレビュー・感想・評価
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ナチスの蛮行によって夫婦の信頼が試される
ナチスものの映画のバリエーションのひとつであり、またロマン・ポランスキーの『死と乙女』と似通ったストーリーだが、心理スリラーとして興味をそそられる。ノオミ・ラパス演じる主人公が、第二次大戦中に自分を犯し妹を殺したナチスと思われる男を見つけて、拉致監禁。男の方が、そんなことは知らないと必死に人違いを訴える。これだけだと、男は犯人か否か、というミステリーに集約しがちだが、この映画は「被害者と加害者の記憶の迷路」を解きほぐすだけでなく、主人公の夫の目線から「大切な人を信じたいという気持ちを貫けるか」という第二の命題を掘り下げている。真相はあなたが考えてください的な曖昧さはまったくないにも関わらず、どこに気持ちを持っていっていいのかわからず、人間関係について改めて考えさせられるラストの余韻を大いに気に入っています。
ロマの復讐
久しぶりに見た、教科書みたいなサスペンス。
戦争犯罪に対する復讐。ストリーを文章にすると極めてシンプル。一つの街で物語は完結するし、登場人物の数も限られています。予算的にも、それほど大がかりとは思えず。つまりは、小品です。個人的には、このレベルの小品で気の利いたものや、ちょっとだけドキ!っとさせてくれるものを、たくさん見たいと言う想いがあるので、これは良かったです。
女の動機は復讐心だが、徐々に、自らの悪夢の根源にあるのが「妹を見捨てて自分だけが逃げた?」と言う罪悪感であることに気づく。旦那は、全てを精算するために、告白した男を撃ち殺す。
脚本的にも、真相の暴露を小出しにする、かと見せかけて隠し、結局最後の場面までサスペンド。技巧的で、個人的には好みです。画は文句無しに一流ですね。
繰り返しになりますが、個人的には、このレベルの作品が、もっともっと日本へ入ってきて欲しい。いや、なんか変でしょ。ここ数年。コロナの影響じゃ無くって。このレベルの洋画、広島での上演本数は絶対に減ってますし、欧州モノに関しては壊滅状態。台湾も激減っすよ。もうね、言いたくはないですけど。アベレージでは「ツマラナイ」レベルになって来た韓国映画や、どこが良いのか分からん中国映画は、一本一本のクオリティを見て上映作品を選んで欲しいと思う、今日この頃でした。
イヤまじで、韓国映画も中国映画も、良いモノだけにして欲しいっす。
ヒットラーとプーチンは同じことしてる
1950年代のアメリカで、かつてナチスの軍人から戦時中にレイプされ、妹を射殺された悲惨な経験を持つマヤは、街中で偶然その男を見かけ、車の故障と偽りハンマーで殴りその男を拉致した。夫ルイスに訳を話し、自宅の地下室に監禁した。マヤは殺したい気持ちを抑え、男に罪の自白を求めた。しかし、男は人違いだと否定していた。本人か、似てる別人か、その男はどうなる、という話。
マヤはロマ人で、ロマの事を知らなかったが、もともとルーマニアでもジプシー呼ばわりされ差別を受けてきたんだと知った。
世界にはロマ以外にも、イスラエル建国までのユダヤ、先日観たマイスモールランドのクルド、ミャンマーのロヒンギャなど、多くの差別を受けている民族が多くいる事を知り、なんとか出来ないのかと今回も思った。
それと、当時のナチスの罪は重いが、現在のロシア兵もウクライナでレイプしてるらしいが、プーチンはウクライナのことをナチスと呼んで戦争を仕掛けている。プーチンはヒットラーと同じ事を80年経ってもしてるな、って思った。
歴史は繰り返されるというから、いずれプーチンも罰を受けるだろう。
マヤ役のノオミ・ラパスはストックホルムケースの時も良かったし、今回も好演だった。
かなり微妙な仕上がりだったかなぁ
なんだか自分の心の置き所をどこにすればよいか迷ってしまった作品でした。
アフターホロコーストを扱っていますからその点がフォーカスれているのか?と思いきや、どうにもその部分については重きを置いていないような気がします。まぁ、悲しい出来事のキッカケとはなっていますし、それを引き起こした元凶ですしね。話の展開は「人間が壊れていく様」、「拡大していく暴力」の恐ろしさが前面に出ていくのですよね。それは密室スリラー的なほどに。怖がらせたいのかなぁ?なんなのかなぁ?と。そしてクライマックス〜まさかの結末につながるわけですが、かなり意外な展開でした。ただ、その展開にあまり説得力を感じることができなかったんですよね。
これまで鑑賞してきたアフターホロコースト作品にはなんらかの主張を感じたのですが、本作からはそれがなかったんですよね。「すべての人間に大きく深い心の傷を与えてしまった出来事である」ということ以外には。社会派なのか?サスペンスホラーに振りたいのか?ただ、ラストシーンを見たときに「あぁ、人間の悲しき二面性」がテーマなのかも?って思いました。マヤとルイスの表情や顔の向きがそう感じさせました。この2面性があるかぎり、争いってなくならないんだろうなぁって・・・。
ラストまでどうなるか全く読めない!
複雑な気持ちに
惜しい!
ルーマニア人のマヤはアメリカ人と結婚し今は幸せに暮らしているのに、自分を陵辱したナチスの兵士を近所で見つけてしまい…という話。
マヤに監禁された男は本当にナチスの男なのか人違いなのか?
共感力の強すぎる優しいマヤの夫も、疑心暗鬼ながら妻への愛ゆえ協力してしまう。彼はできる限り真相を探ろうと様々な方法で証拠集めをするが、人違いの線が強く妻の方が暴走しているだけのように見える。
狭い住宅街で拉致したら怪しまれるが綱渡りのようにマヤも男の家族に近づき証拠を探す。
しかし、人違いの証拠に見える物も疑ってみれば誤魔化すための工作に見えるし、マヤの記憶は欠落があるし、終盤まで真相が見えない緊迫感はすごい。
しかし、こういう映画はもう一ひねり欲しいんだよね。それがなくて、案外あっさり終わったなあという印象。
ほんと、惜しい映画だ
許諾取ってるんだよね?
数年前に宮沢りえ、堤真一、段田安則で見た「死と乙女」というお芝居とクリソツでびっくり。
それはチリの劇作家アリエルドールマンが独裁政権崩壊後のチリを舞台にした話し。
シューベルトの曲が口笛になってた。
チリの独裁政権はナチスに代わってた。
舞台では子供は居なかったけど、、、何から何まで設計が一緒。(追記:どうやら許諾とってある模様)
宮沢りえがフワッとしてて病気ぽくも見え事実なのか幻想なのか見てて迷った覚えがある。
舞台の結末ももう少しあやふやで象徴的だったかなぁ、、、。
でも映像ならではのリアリティある描写はなかなか迫力があったし、出演者もガチだった。話もチリよりナチスの方が世界中で理解してもらえるから良いよ。エンディングもはっきりしてメッセージわかりやすかったと思う、、、the secret we keepタイトル通り。
ウチの親に聞いても「楽しい事など何もなかった」と言って戦争の頃の話はなにも話したがらなかったなぁ、、、、。
戦争中だからで済ませられます?
マヤには、秘密がありました。
誰にも言わない
つもりだった。
あの男に出会うまでは。
しかし
記憶はあいまい
彼は
違うと言うが
人は、残酷と神様が同居している。
後悔とともに生きる。
シンドイ作品だった。
記憶
繰り返される悪夢・・・
ナチス兵に暴行されたことから、度重なる悪夢に悩む女性の元に、自身を暴行したと思われる男が現れ復讐するが果たしてこいつは本当にあの時の男なのか…!?といった物語。
人が変わったように、トーマスと名乗る男を監禁し拷問を行うマヤだが、優しい夫に本当に本人なのか尋ねられると、「私も記憶があやふや…でも間違いない‼」的な。。大丈夫かおいw!?
不審に思う夫はトーマスについて調べるが、どうもシロなんじゃないかと思いつつ、しかしイマイチ言動が覚束ないトーマスの態度も気になり…観ているこちら側としても、果たして何が真実なのかと悩まされる。
回想シーンで見られるナチスの蛮行にはゾワっとさせられるし、マヤは勿論、トーマスやその妻も何となく不安定な感じで話の行方が読めずにのめり込めるし、マヤ達の行為がご近所にバレそうになる展開はとにかくハラハラさせられる。
そして明かされた真実。思いもよらない展開に、この物語はまだまだ終わりそうもないなぁ~と、恐ろしさと虚しさを感じさせる。ツッコミ所も多々あるが、真実が見えてこない展開からのクライマックスまでの持って行き方等々、上手いつくりに終始見応えがあった良作◎
やっぱり戦争は良くないですよ、当たり前ですが。
今だからこそ、感じるモノのある怖さに戦慄が走る作品だった。
左手の薬指
ノオミ・ラパスが主演で制作陣にも名を連ねています。1960年頃のアメリカの町。アメリカ人の医師と結婚したルーマニア人女性は戦争中にドイツ兵から受けた性的虐待によるPTSDに苦しんでいた。ある時、町で自分をレイプしたドイツ兵のカールと思われる男を見かけてしまう。復讐のために計画的に男を襲い、クルマのトランクに拉致することに成功する。
原題は The Secrets We Keep.
We の意味するところは互いの夫婦だけではないダブルミーニング的な題となっている。
マヤには夫に秘匿していた過去(出自)があった。ナチス強制収容所に容れられていたマヤとその妹。ドイツ敗北後、ルーマニアを目指していたが、ゴーカンされ、妹は殺された。PTSDのせいで記憶が曖昧で、自分は妹を見捨てて逃げたのでないかという罪悪感にも苛まれ続けていた。
トーマスも元ドイツ兵のカールであったことを隠し、スイス人と偽り、ヨーロッパを捨ててアメリカに移住することを目的にユダヤ系アメリカ人の女性と結婚していたのだった。
夫にロマであることを隠していたマヤ。そのために強制収容所に入れられていたことも隠していたため、精神的に不安定な原因がドイツ兵による性的虐待によるPTSDであることも言えなかった。
ともに配偶者に言えない秘密をもち、PTSDに苦しんでいるマヤとトーマス(カール)が哀れで仕方ないのだが、マヤはカールにシンパシーを感じはじめ、殺さないて赦すことも考えはじめていたようだった。地下室で拷問され、あげくのはてに殺されてしまうカールのほうにむしろ同情してしまった。直情的で残忍なマヤにおののき、やっぱり「ロマ」の血のためかとも思ってしまった。ノオミ・ラパスの狂気の演技はとても切れ味が鋭かった。さすが。
両親がロマの場合と片親だけロマのハーフでは差別に重大な差があることも示唆されていて、興味深かった。
ポーランドでは人口の約10%がロマであるが、その事実を認めること自体がタブー視されている。差別問題は深刻で根が深い。「愛を読む人」のケイト・ウインスレットを思いだしました。
サスペンススリラーの名作。見る価値あります
予告編で以前から気になってました。予想以上に良く出来たサスペンススリラーの名作です。
ファーストシーンからミステリー要素が強く張り詰めた緊張感が続き最後の意外な展開まで全く飽きさせる暇がありません。
ノオミ・ラパス演じる主婦マヤの15年前の悲惨な記憶が徐々に蘇っていき狂気の世界に入っていく夫婦の姿は見応えがありました。
マヤの夫ルイスも誘拐されるスイス人と名乗る謎の男、さらに姿を消した夫を心配する妻の4人の姿をラストまで食い入るように見てしまいました。
都内で封切館も少ないですがぜひ公開中にご覧ください。
ちなみにノオミ・ラパスは脚本にほれ込んで製作総指揮を引き受けてユバル・アドラー監督を直接指名して実現させたそうです。
現在公開中の映画の中では必見です
戦争犯罪について私たちができること
戦争は、勝ったほうも負けたほうも国の再興・復興という大きなミッションを克服しなければならない点では変わりない。勝利の高揚感の中で始まるか、絶望に打ちひしがれた中で始まるか、の違いがあるのだとしても。
と思ったところで愕然としました。
自分はイタリアやドイツの戦後の歩みについて何も知らないではないか❗️ナチやファシスト党について、このふたつの国は自国内でどう総括し、今に至っているのか。
ド・ゴールのおかげで戦勝国になれたフランスでもナチに加担したヴィシー政権については腫れ物扱いのようだったと聞いたことがあります。
日本は、といえば戦後このかたずっとアメリカ主導できたので、そちらについて行くのに精一杯で、アジア各地において行われたであろう局所的な戦争犯罪について特定個人を裁くことも含めて総括的なことはたぶん行われていないのだと思います。
徹底的に負けて国の体制自体もリセットされたことで、戦時中に起きた色々なものも一旦なかったことになり、戦争体験者の大多数が鬼籍に入ってしまった今(死人に口なしだから反論される心配がないせいか)、歴史修正主義の勢力が〝この国のかたち〟を法解釈の変更を積み重ねながら戦争のできる国に変えつつあるように思えてなりません。
『戦争犯罪においては、加害者だって心に深い傷を負っている場合がある、だから許されるべきである』
なんてことを言うつもりはありませんし、被害者による私的制裁(リンチ)もまた許されるものでもないはずです。
戦争犯罪のような、個人が負うにはあまりにも重たい出来事は、公的な記録としてしっかりと後世に残し、歴史の中で裁かれるのを待つ、というのが戦後を生きる我々がすべき責務なのだと思います。
そう思うにつけ、公文書改竄やお上にとって都合の悪いことはそもそも記録に残さない、ということがあからさまな最近の政権がとても危険なものに見えてきます。
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