オフィシャル・シークレットのレビュー・感想・評価
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勇気ある行動に拍手!
キャサリンは憤りから後先を考えずに、リークしたのだと思うが、機密情報を漏らすということは、職務違反になることはわかっていたと思うので、すごいことをしたのだと思う。イラク戦争は、結果として大量破壊兵器は見つかっておらず、息子ブッシュ大統領の勇足ということは明白なので、戦争を回避することはできなかったが、この告発は間違いではなかった。正統的な描き方で、時制を崩したりせず、真正面から描いていて、わかりやすく好感が持てた。新聞社の描き方も、最初から飛びついたりせずに、ウラを取ろうとするところが、やっぱそうだよねと思ったし、弁護士側もどうやったら、罪を軽くできるのか作戦会議を開くところなどおもしろく観た。興味深いと思ったのは、米語と英語の違いが指摘される点。日本人からしたら、同じようなものだと思っていたら、微妙に違うのだとは… それにしても、政府は汚い。強制送還しようとしたり、みせしめのために起訴を遅らせたり、やりたい放題だ。でも、こういう映画が作られることはすばらしいことだ。日本では、昨年『新聞記者』が話題になったが、桜を見る会や森友・加計問題が今後映画になることがあるだろうか? 残念ながら、それはないと思う。そんな気概を持つ監督、製作者、配給会社はない。企画がもしも立ち上がったとしても自主規制してしまうに違いない。そんな国に住んでいることは悲しい。
英国では、情報公開と、司法が上手く機能した。だが我が国で同じコトが起きたらどうなるか?
本作を見ながら思ったのは、これが日本ならどうなるか?
1 主人公が逮捕され、その後、保釈される。
日本の観客はコレを見てどう思うのかな?
米英映画を見慣れてる人間から見れば当たり前だが、日本ではまずあり得ない。
裁判が終わるまで拘留されたままだろう。
そもそも、警察官が公選弁護士を呼んでくれることもないし、取り調べに弁護士が同席することもない。
2 裁判での勝利の決め手は「情報公開」。政府側は、情報公開により、戦争の大義名分がないことがバレるより、本件裁判での不戦敗を選んだ。
だが日本ならどうなるか?
まず、政策の意思決定に関する書類が公開されることは無いだろう。恐らく「のり弁」か「口頭のため書類は無い」と言われるのがオチ。近年の政府対応を見れば明白。
主人公は「裏切り者」呼ばわりされるし、日本でも同様に批判されるのだろう。
だが、国民を騙し、裏切ったのは、彼女か、それとも政府か?
本作では結論が出たが、日本で同じコトが起きた時、同じ結論が出るとは思えない。
保護すべき国家機密とは
キャサリン・ガン事件の映画化。
そもそも。イラク戦争に関する米英政府の公式な開戦理由は以下。
1:サダム・フセインは大量破壊兵器の所持を公言しており国際社会の脅威たり得る事。
2:クルド人への弾圧をはじめとした圧政は人権への罪である。
3:度重なる国連査察の妨害(国連議決違反に該当する事案を含む)
4:3は第一次湾岸戦争の停戦条件破棄の要件となる事。
5:アルカイーダとの協力関係が強く疑われる事。
で、ブッシュjrとチェイニーによる証拠・証言のでっち上げ、意図的な情報操作大会が始まります。周知の通り、1と5には何らの証拠も見つかっていません。最終的には、非常事態下における大統領権限により、先制的自衛権の発動としてイラクへの侵攻が始まります。
この頃、ニジェールからのウラン入手情報の捏造、国連盗聴事件、プライム事件、そしてこの「キャサリン・ガン事件」などが起きます。イラクで各国の利害が交錯していた事は、見方を変えればサダム・フセインが如何に戦略的に外交を展開していたかを表しているとも言えますが、その狡猾さ故に、より狡猾なブッシュと言う悪魔に殺害されたのがフセイン。
戦争の結果。4万近い戦死者を出し、10万人を軽く超える民間人を犠牲にして(正確な人口動態不明につき数は調査機関により大きくバラついています)しまう。サダム・フセインは死刑となり、イラクの石油利権はアメリカとイスラエルに収奪される(外資に陥ちた事を穿った見方をすればです)。
何にしても、国連安保理常任理事国の議決は見込みが無かった訳ですから、キャサリン・ガンの告発はショッキングではあったけど大勢には影響せずに終わります。イラク壊滅で困る国もあった訳ですから。
国家の機密法案である「公務秘密法」は機密保持対象を政府が指定する、とされており、一見して恐怖を感じるものですが、個別には、その妥当性を裁判で争う自由はあるものと考えられます。日本でも「特定機密法案」で野党が騒ぎました。小池新党前の事でしたから、民主党時代。「暴力や恐喝等、違法な手段で情報を入手してはならない」と言う条項に、何故か強硬に反対する不審をメディアに指摘された野党は、以降、ことある毎に審議拒否を繰り返す様になりますが、我が国の国会が崩壊したのは「スパイ防止法」の入り口を入った頃だと言うのが可笑しい。身バレしてますやんw
キャサリン・ガンは、誰かに頼まれたのでも無く、脅されたからでも無く、国民に仕える身としての義務感から、非常任理事国の盗聴を指示するメールをリークする。政府による起訴は有耶無耶のうちに取り下げられます。
「メールは保護すべき国家機密にあたらない。何故ならば、捏造されたものであるからだ」
もうね。開戦理由がでっち上げだもんね。何でまアリかよ。色々と、トランプの方が分かりやすいし、まだ可愛い。石油より産業と金融。少なくとも、戦争のリスクは低いでしょ。
無駄を感じさせる演出も、偏った政治的主張も無くて、安心して見ていられる映画でした。左翼な記者は変人扱いだしw ただ、彼は無茶苦茶有能だったし、アクティブでカッコ良かったです!
良かった。凄く。
移民の夫を持つ身でも⁉︎
ブッシュが大統領でなかったら、この戦争は起きなかっただろう。あの当時よく話していたことを思い出した。中東の戦火のニュースには心を痛めていたものの、対岸の火事とせず、自身を危険にさらしてまでこの戦争を止めたいと行動を取ったキャサリンの勇気は本当にすばらしい。ただ、移民の夫にまで影響が及ぶ可能性を(映画の通りだとすると)想定していなかった?のは、、GCHQの職員の割に、うーん、ちょっと浅いのかなと感じた。強制送還を間一髪で止められたのは運が良かったとしか言いようがない。 でもそれも、戦争を止めたい、その一心だったからなのかもしれないし、これが実話ゆえの生身の人間の行動なのだと思う。最後に裁判所から出てきた時の本人のインタビュー映像が出てくるが、なんと言うか、すっきりとした潔い姿がとても印象的でした。
共感できるが響いてこない
キーラ・ナイトレイの正義感や恐怖や不安はすごく理解できるし共感もできる。 なんだけど、なぜかそれらがまったく響いてこなかった。 言うなれば、スクリーンの向こう側で起こっている話をただ客席から傍観しているという感じ。 実話だし、キーラ・ナイトレイの演技も悪くない。なのになぜこんなにも響いてこないのか不思議なほど。 演出のせいなのか? それとも、脚本? もしかして、こちら側の感性の問題?
間違っていることは間違っている。
この作品のレビューは難しい。 慎重に言葉を選ばなければいけないと切に思う。 題材は民主主義のお手本アメリカの当時の大統領が、 実はとんでもない大嘘をついていて、 それによって大量虐殺がなされたイラク戦争の発端の話を、 英国GHCQ側から描いた真実に基づいた作品。 社会的な意見はさておき、 娯楽としてもこの作品は実によくできている。 諜報機関というものが、どのように動いていて、 そこに務める職員たちはは至って普通で、 亡命を申請している人の苦労や、反戦主義者たちの苦悩や、 人権を取り扱っている弁護士たちの意思の強さや、 新聞記者とはどのようにして揺れ動くのかとか、 とにかくそういった「中身」が実に面白い。 なので特に社会派じゃなくとも、この作品はきちんと楽しませてくれたし、 事実をこのような形として表現したのには、 実は大きな目的があるのだろうときちんと気付かせてくれる。 間違っていることは間違っている。 たったそれだけの意思を貫き通すのに、 こんなに大変な思いを強いられる。 しかし人として、それはとても大切なことなのだと、 この作品は訴えている。 弁護士の最後のシーンは特に印象的だった。
全ての「国民」に見て欲しい
私は日本で生まれ育ち、思春期以降の11年を米国で過ごした。
人生の殆どをこの両国で育ったので、もしも同じことが日本や米国で起こればどうなるか、そんな想像をしながらこの映画を鑑賞した。
日本の場合、そもそも米国がこのようなトップシークレットを持ちかけることはないだろう。
米国はイギリスという兄弟分だからこのような国家機密を共有したのだ。
文字通り「血を分けた」兄弟で、それは米国独立から何世紀と経ったいまでもアメリカ人とイギリス人のDNAには刻まれている。
残念ながら日本がこのポジションにのし上がることは永遠にないだろう。
しょせん日本は米国の「便利なポチ」でしかない。
日本人であるがゆえに、そんな悲しい壁も感じた。
逆にいえば、英国の歴史的ポジションと政治力は、やはりいまでも強大であることを実感できる。
この映画を観て気づくこと、その2
イギリスは民主国家だということ。
確かに日本もアメリカもそうなのだが、似たようなアメリカ映画とこの映画を見比べると随所に微妙な違いが見られると思う。
GHCQというイギリスの諜報機関においても、主人公のキャサリンはじめそこで働く人々の姿勢は、アメリカのそれと比べると一種の「リラックス感」すら漂う。
軍事力や予算規模の違いだといえばそれまでだけど、ヨーロッパとアメリカの中間的な、イギリス人が置かれている微妙な立ち位置。
アホなブッシュ政権に対する、冷めた目線。
ヨーロッパ的な観点も残しつつ、しかし兄弟国ゆえに付き従わざるをえない矛盾。
そんな空気が伝わってくる。
国家の機密を漏らしてからの、キャサリンと夫への扱いは確かにひどいものではあったけれど、これがアメリカだったら、もっとずっと悲惨なことになっていたことは想像に難くない。
キャサリンのの行動を支持し助ける人々がイギリスにはたくさんいる。
それに救われたし、スカッとした。
メディア(オブザーバー紙)の活躍も素晴らしかった。
日本のメディアにこれができるだろうか?
はなはだ疑問である。
3番目(これが最後です)
正義を貫いても良いのだということ、最後には報われるのだということ。
日本人には、「お上の命令は絶対」のようなところがある。
自分の信条を殺してでも従わなければいけない、というような。
私がいたアメリカでも、特にこのような「お役所」ではそういう思考の人間がたくさんいる。いや、そんな人間ばかりだ。
しかし、民主主義国家に生きる我々は、国民を救うことに繋がるならば、国家(=その時にたまたま政権を握ってるだけの人間たち)をも裏切っても良いのだ。
本来の民主主義とはそういうものであるべきと思う。
しかし人生を棒に振る覚悟をもってしてそれを実行するのは、やはりものすごい勇気のいることだ。
久しぶりに胸の熱くなる映画を観た。
最後に、映画を観終えてから私は、チャップリンの「独裁者」のスピーチを思い出した。
「諸君は機械ではない、人間だ」
国家機密を暴露する決断をした主人公キャサリン、
社運を賭して公表したオブザーバー紙と弁護士たち。
そしてこれを映画化した関係者たちに拍手を送りたい。
これは決して、イラク戦争時の欧米「だけ」を扱ったポリティカル・サスペンスではなく、現在にも繋がる問題を扱った作品。
2003年に勃発したイラク戦争は、大量破壊兵器をイラクが保持しているという、主に米国が主唱した大義名分が発端となっています。しかし現在では、多くの情報・資料が、この米国の主張が根拠のないものだったと暴露しました。だが、日本を含め多くの報道機関は、米国の大義名分を覆すどのような証拠があったのかについてあまり具体的に言及してきませんでした。本作はそうした米国の戦略上欺瞞と、それに同調した英国政府を一人の職員の目を通して描いています。 キーラ・ナイトレイ演じる主人公、キャサリン・ガンはGCHQ(英政府通信本部)の政府職員なので、もちろん当時の世界情勢は国家機密を含めて熟知しています。そんな一般の人々とは隔絶した立場にある人物を主人公にしたポリティカル・サスペンスは、しばしば難解な筋立てとなり、かつ背景状況の熟知を要求するなど、観客を取り残しがちになります。しかし本作では、彼女が夫と報道番組を見るという形で、さりげなく当時何が起こっているのかを説明しています。これはなかなか上手い演出だと感心しました。 じゃあこの物語は17年も前の、しかも遠く英国政府内の出来事として片付けることができるのか、というと、決してそうではありません。本作が投げかける重要な問いは、「国家への忠誠義務を負った公務員が、国民のためにあえて政府に背くことは正当なのか」です。もちろんこの問いは、ここ数年来、日本でも米国でも、世界のあらゆる政治的状況で繰り返し取り上げられてきました。そのため本作が語る問題を、現在の私たちと地続きであることを実感する観客は少なくないでしょう。なぜ今、この作品が作られなければならなかったのか、強い必然性があったのです。 自分の信念を曲げないキャサリン・ガンの、率直で力強い言葉に大いに勇気づけられますが、結末間際にある人物が口にする、この事件の背景動機には唖然というか慄然としました。そしてレイフ・ファインズのひとこと。よく言った!
ドキュメントにもエンタメにもどっちつかず
英国の諜報機関で盗聴通話の翻訳・レポート作成をする公務員である主人公が、「私は政府・政権に仕えているのではない。国民に仕えている」と毅然として答えるところは、しびれました。
今の日本において、国家公務員・官僚・政治家が、組織のため、上司のため、自らの保身と出世のために働くことはあっても、果たして国民のために働いているのだろうか、と。
ただ、非常に手堅い作りとでもいおうか。
ドキュメントにもエンタメにもどっちつかずといおうか。
『大統領の陰謀』『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』『ザ・シークレットマン』『金環食』などの政治関連作品群に比べて、作品に観客を引き込む力が薄いと感じました。
COOOOL!!!!!!!!
クールで、めっちゃ、面白い!! たまたま他の映画(「シチリアーノ」)が満員で、代わりに観た、みたいな位置付けになっちゃったが、評判の高さは感じてた。こっちもほぼ満員で、最前列鑑賞だし。(最前列、嫌いじゃないけれど…) ああ、得した感じ。 ああ、あの「アイインザスカイ」の監督なんだ。あれもクールな傑作だったもんね。俺、この監督のテイスト、ジャストミートらしい。こりゃ、覚えとかなきゃ、ギャビンフッド監督! 9.11のテロを受けた米国が、米英等の有志軍で、「テロリストを匿い、大量破壊兵器を保持している」との疑いで、イラクに侵攻する直前の英国。 諜報機関GCHQで働く主人公が、明らかに違法な工作活動に憤り、その指示内容をマスコミに流し、スパイとして起訴される話。 盛り上がりを作りにくい話に思えるが、初めから終わりまで、ずっとドキドキしっぱなし! 法廷への階段なんて、ちょっとしたホラーだよね。 これが、実話! 世界には、驚くべきことがいろいろあるんだなあという驚き。 主人公は、憤りからリークしたものの、思い直したり、不安になったりしていたのが、途中から腹が座ってくる様子が、とても凛々しくてよかった。 法廷前の電話で、若き夫が言う "So proud of you." (君を、誇りに思うよ) 自分がトルコに強制送還されそうになる危機に陥ったりしながらも、これが言える夫、素晴らしい。「そういう夫でありたい」と思いました。
勇敢なリーク
良い作品。 キャサリンがリーク張本人なのに オブザーバー誌にその記事が掲載された時の 、ビビリ方。後悔したように見えた。 次第に 【やってやろうじゃん】的な意欲が、徐々に沸いているように見えた。 このような事件があったのは知らなく、この作品で知りました。 勉強になりました。
ソーシャル・ディスタンス
久しぶりに映画館に行きました。コロナ感染拡大防止の為、適度な間隔を開けての座席指定。寂しい限りの観客数でしたが、そうじゃなくてもこんなもんじゃないかなと。 映画、何を観たの?と聞かれた時、"オフィシャル・シークレット"って言うタイトルが出てこないんですよ。さっき観たばっかりなのに、タイトルが頭に入らない。"シークレット"はすぐ出てくるんだけど、"オフィシャル・シークレット"になると出てこない。 歳か?やばい。
よかった
情報機関の職員が内部告発して大変なストレスを抱える様子をリアルに描かれていた。特に気の毒だったのがご主人が移民で在留資格を奪われそうになることだ。権力の横暴がひどい。途中から法廷ドラマが展開する。最近途中でウトウトすることが多かったのだけど最後まで眠くならなかった。
主人公は日本で英語教師をしていた
実在の人物をモデルにした映画。主人公のキャサリン・ガンさんは以前広島で二年間英語教師をしており、その時に平和行進などにも参加し、戦争の悲惨を感じてイギリスに帰国後、一人で政府を相手に戦争に反対する行動をとる。地味ですが、心に染みる映画でした。
正しいことも、できなかった
王様の耳が何か、知ってますか?。みんなに、伝えたくないですか?。みんなに伝えることで、世界はどうなると思いますか?。 私にとって正しいこと。国にとって正しいこと。隣の国にとって正しいこと。何故、一致しないんですかね?。いつも疑問です。 限られた空間と、限られた情報から生成される正義。そこに国家の大義をトッピングしたら、もぅ、怖いもの無しです。その後、待っているのが、「素晴らしき哉、戦争」…。 ところで、大量破壊兵器って、何?。クルドの民が苦しめられた、サリンか、マスタードガスか何か。あるいは、巡洋艦が放つ、巡航ミサイル、トマホーク。そういうのって、人の人生、大量に破壊してませんかね?。 いずれにせよ、全ての人が、知る権利を享受して、全ての人が、ヒトの数だけ正義があることを、認識できたら、戦争が無くなるのかしらと、夢みたいなこと、思ってみました。 ただね、私が、同じ現場にいたら、同じだけ正しいことは、しなかったと思います。それが偽らざる私です。 まぁ、あれですかね。ルールを守ることも、正しいことなら、ルールを糺すことも、正しいことですかね。ただ後者には、ちょっと勇気が要る。本作から、そんな勇気を受け取った方が、現れることを祈ります。
権力を国民の手に取り戻すのだ
改めてジョージ・ブッシュ(息子)は最悪の大統領だったとつくづく思わせる作品だ。そしてそれに付いていったトニー・ブレアもまた最悪の首相であった。そしてこの二人のチンピラ政治家の足元で尻尾を振っていたのが小泉純一郎である。明治以降一番情けない総理大臣だと思っていたが、まだ大統領に就任もしていないトランプに早々とへーコラしに行った安倍晋三には驚いた。情けないを通り越して日本の恥となった。 しかし世界はアホな指導者を戴くアホな有権者で溢れている。特にアメリカは自国を世界一の国だと思いこんでいるフシがあり、歯向かう国があれば徹底的に叩こうとする。CIAはそのために裏で動いている。たとえ大統領がオバマになっても、その辺は変わらなかった。イギリスのMI6にも同じような傾向がある。諜報機関の怖さを知っているのが自民党の中枢にいる人々で、歴代の自民党政権は悉くアメリカに従順であった。 もしアメリカの政権に逆らおうとしたらどうなるか。それは沖縄の米軍基地を排除しようとした鳩山由紀夫がどうなったかを見れば明らかである。違法でもないことで政治資金の問題を追求されて総理大臣を辞めることになった。同じ基準で言えば安倍晋三は10回以上も辞任しなければならなかったはずだ。ところが「責任を痛感する」を連発して誤魔化し、歴代最長になるまで総理大臣を続けた。大臣室で100万円を受け取ったとされる明らかに受託収賄の大臣は、しばらく姿をくらましていたら、しれっと復帰している。検察も含めて殆どの官僚もまたアメリカの方を向いて仕事をしていることの証左である。民主主義の理念に背くことを悩んだ近畿財務局の赤木俊夫さんは稀有な存在だ。政治家も官僚も民主主義が国民主権であることを忘れ、権力を私物化しているのが世界の政治の実態なのである。 キーラ・ナイトレイはやっぱり上手い。演じたキャサリンは、政権が歯向かう者に対してどれほど冷酷で陰惨な仕打ちをするかを思い知らされ、怖さに震える。普通の庶民の反応としては至極当然なのだが、映画のヒロインとしては物足りないし情けない。何のためのリークだったのかと思ってしまうほどだ。このあたりの演技はピカイチだ。 しかしキャサリンはそのままでは終わらない。人間には慣れというものがある。幽霊もスカイダイビングも慣れたら怖くなくなる。もちろん危険が減る訳ではないが、動揺や恐怖が減じて冷静さが増す分、対処がより現実的になる。簡単に言うと強くなるということである。キャサリンは強くなり、彼女に影響されて夫も強くなる。怯えて縮こまっていた二人は周囲の応援と協力者の力を借りて立ち上がる。権力を国民の手に取り戻すのだ。 政権は法を盾にして民衆を弾圧するから、庶民も法によって政権と闘うしかない。しかし法というものは人間が作ったものだから、解釈によっては適用が異なる。安倍政権のように都合よく解釈すれば何でもありだが、イギリスは流石に法治国家であり、無理な解釈で法を歪めることまではしない。 前半のヒリヒリする緊張感から、後半は政権と庶民、民主主義のあり方、そして法を用いた政権との戦い方について、考えながら鑑賞することになる。とても見応えのある作品だった。
人は正義感でどこまでできるか
イラクと戦争する法的根拠を得るための国連決議を有利にするため、NSAが諜報活動を指示したメールを告発した女性の物語。 告発した女性は反戦主義者ではなく、不正な工作で大義のない戦争をさせてはならないという単純な正義感にかられて行動している。リークされた情報を記事にした記者も、(真偽は確認しつつ)政府に睨まれようが正しい情報をニュースにするという姿勢を貫いていた。 この2つの話を中心に展開。地味な話なのにとても緊張感があって、しかも考えさせられる内容がたくさん含まれた脚本だった。イラク戦争絡みの映画は良作が増えてきている。 ただ、最後の法廷シーンは肩透かし。事実だから仕方ないけど。スッキリとはしない終わり方だ。イギリス政府もイヤなことするね。 個人的には、イギリスのマスコミが政府の発表だけで記事を作らずにちゃんと取材しろよ的な主張が盛り込まれていたところにドキッとしてしまった。今の日本と似てるじゃないか!
政府と国と国民と
ファーストデーに観賞
コロナですっかり洋画も貴重ですね…
2003年のイラク戦争開戦にまつわる
米英政府の陰謀を偶然見つけた諜報情報部のキャサリンの
葛藤と何が正しいのかを問いかける実話ベースの作品
感想としては
面白かったんですが
映画内でハッピーエンドで片づけるには
ちょっと複雑な気持ちになりました
日本で同様の事件というと
2010年の中国漁船体当たり事件でしょうか
領海侵犯した中国漁船が追跡する海保巡視艇に体当たり
船長は逮捕されるも当時の民主党政権が対中外交を
意識し船長を釈放し事象をもみ消そうとした
ところを衝突の動画がネットに公開された事件です
あの時もリークした海保官が英雄視はされつつ
公務員の私的な情報公開に懸念を持ったのは確かです
キャサリンは偶然目にしたアメリカの工作を
イラク戦争開戦につながると判断し独自にリークし
反戦活動家を通じてメディアにリークした結果
米英外交問題にまで発展し
実際にクルド人の旦那の身柄まで脅かされてました
キャサリンは後悔しますが弁護士らと話し合うにつれ
政府の陰謀で国民を危険にさらすのを防ぐ行動だった
という見解をもって主張する事になります
この後付け感が…まあそういうものですけど
確かにイラク戦争開戦の無理矢理さは理解しているし
その後のイスラム国台頭の火種になったきっかけの
戦争になってしまった事実を今は知りますが
それでも諜報部員が身勝手に統制を欠くのは
結果論的に不安が残ります
今は戦争より遥かに損害が及ぶ経済制裁や
今のコロナ禍などがありますし情報のコントロールは
より重要になっていると思います
日本のマスコミはもう真実を追究する気は無いようですし
自分達で信用できる情報を得ていかねばなりません
それだけに公務員の守秘義務は維持して欲しいところです
怪しいと思う瞬間がいくつもあります
よそで釣ってくれ
イギリスの諜報機関で働く主人公が、アメリカ諜報機関から届いたよろしくないメールを見てしまい、良心の呵責からリークし大騒動となる物語。 不法な開戦を止めるため、正義に走るキャサリンの行動が、英国紙記者やその仲間たち、弁護士たちを繋いでいき、最後は裁判所で検察側と闘うことに。 序盤は良すぎるテンポにおいてかれそうになるが、内容自体は複雑すぎず、比較的観易い作品。 法廷へあがるときの階段のシーン等々、細かい所の演出も凝っており、緊張感がたまらない。 嘘を嘘で隠すといった話はよくあるが、正義の為に真実を伝えようとするのも命がけとは世知辛い。。 さらにキャサリンは、直接は関係ない夫に対しても粗嫌がらせと言っても良い仕打ちを受けることになり、絶望的な展開に。 そして何より、この厳しい決断をしたにも関わらず、ご存じの通り、結局戦争は始まってしまったのがなんともやるせない。 まぁ確かに、我々一般人が普通に勤めている会社でも、情報をむやみに持ち出せばそれはいけないわけではあるけど…。それが国家機密であり、だがしかし罪のない人々の命が失われかねないものだった場合、、、う~ん。 序盤はオムニバス的な展開から最後皆が集結していく感じは高まったし、正義に走る登場人物ひとりひとりがカッコよい。日本のメディアも国民に非難されがちだけど、中にはマーティンのように闘っている人もいるのかな。。 とにかく、正義やら忖度、嘘と真実と云々と・・・が大いに味わえる良作でした。
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