「【”私は政府ではなく、国民に仕えている・・” 英国諜報機関で働きながら、政略絡みの戦争を止めようとした女性の姿を描く。Based on the true story。】」オフィシャル・シークレット NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”私は政府ではなく、国民に仕えている・・” 英国諜報機関で働きながら、政略絡みの戦争を止めようとした女性の姿を描く。Based on the true story。】
ー英国諜報機関GCHQで働くキャサリン(キーラ・ナイトレイ)はある日、イラクを攻撃するために安保理メンバーの盗聴を促す米国諜報機関NSAのメールに気づく。同僚は、”仕事だ・・”と浮かない顔で、関与しようとしない・・。ー
■印象的なシーン
1.キャサリンが苦悩しながらも、メールをリークするシーン。
ー確かにサダム・フセインは唾棄すべき人物であったが、戦争になれば罪のないイラクの市民や米英の戦士の命も危険にさらされる。
更に、誰が情報をリークしたのか、徹底的に調べる査察官(柔和な顔をしているが、あのような顔つきの男は油断ならない・・)が、キャサリンの過去を確認するセリフ。
”幼いころ、日本の広島にいたんだね・・。では、平和記念資料館にも行ったね・・。”
成程・・。
2.キャサリンの夫が、トルコ人であるため過去に永住権を得られなかった事実。この設定が作品に深みを与えている。
査察官から夫の事を正された時にキャサリンが言い放った言葉。
”夫は”クルド人”です!サダムを助けるためにリークなんかしない!”
だが、そのためにキャサリンの夫は国外退去寸前まで追いつめられるのである。
3.キャサリンを助ける人々及びリーク情報を記事にしたマット記者たちの姿
・彼女が自ら、”リークしたのは私”と苦悩しながらも申し出、公務秘密法違反で勾留された際に付いた女性の国選弁護人が、”私の専門外だから・・”と言い専門弁護士ベン(レイフ・ファインズ)を紹介し、”頑張って!”と言う場面。
・アメリカ人フリージャーナリストやイギリス全国紙”オブザーバー”のマット記者たちが、リーク記事の信憑性を突き止めていく過程。
(校正係の女性が、米国の文章を英国の文章(綴り・・)に少し書き換えてしまい、信憑性が疑われ始めていた・・。:リアリティあるなあ)
そして、アメリカ人フリージャーナリストが”謎の電話”を手掛かりに、メールを発信したNSAの高官フランク・コザが実在することをとうとう、突き止めるシーン。
・とうとう訴追されたキャサリンの初公判時の、検察側の意外な対応。
それは、ベンによるある書類”イラク戦争の合法性を示す証拠”の開示を求めた請求を勘案しての事だった・・。
ー当時のゴールドスミス法務長官のブレア首相へ伝えた懸念”武力行使を正当化する新たな国連決議がないと、イラクに対する戦争は違法になる恐れがある・・”の存在がその背景である。ー
<だが、エンドロールで流れるイラク戦争により犠牲になった人々の数に暗澹となる。
かの”証拠なきイラクの大量破壊兵器”の問題は、年月とともに曖昧にされ、ブッシュ大統領も、パウエル国務長官も、ブレア首相も戦争責任を問われてはいないのである。>
■蛇足 同テーマでブッシュ政権の嘘を描いた「記者たち 衝撃と畏怖の真実」も併せて観ると、良いのではないかと思います。