「思ってたよりはずっと良かったが」映画 えんとつ町のプペル 青空ぷらすさんの映画レビュー(感想・評価)
思ってたよりはずっと良かったが
公開時にネット上での賛否の感想を読んで、これは多分観たら絶対文句を言うだろうし、そうと分かっててわざわざ見に行くような当り屋みたいな事をするのも嫌だったので観てなかったんだけど、今回アマプラに降りてきたというので鑑賞。
率直に言うと想像してたよりはずっと良かったし、後半は思わず涙するシーンもあって、何か良いもん見た感はあるんだけど、同時にずっとモヤモヤが残って素直に楽しめない部分も多々あり。
具体的に言うと、主人公の少年ルビッチが全然能動的じゃないとか、「星があることを証明する」と「夢をかなえる」は別じゃね?とか、ルビッチ=純粋=善と描かれてて、そこに批評的視点が一個もない危なっかしさとか。
中でも特に気になったのが「圧倒的なディテールの欠如」で、例えば作品の世界観を構成する「えんとつ町」の描かれ方が凄く薄っぺらくて、何となくスチームパンクっぽい雰囲気はあるんだけど、あるのは「雰囲気」だけで作品世界を構成する街や、建物、キャラクターや歯車の一つに至るまで、ただのカキワリであり、物語を動かすために配置された「人形」であり、世界をそれっぽく見せるための飾りであり。
それがなぜそこにあるのか、その人はなぜそういう人になったのかという理由の断片が見えないので、街には生活がなく人には血が通って見えるんだと思う。
あと、スタジオ4°cのアニメーションは褒められてたけど、個人的にはずっとツボがズレてるというか、観客が映像や物語にカタルシスを感じるカメラワークみたいのって決まってると思うんだけど、それが悉くズレてる?ように感じて、ずっと気持ち悪かったんだよね。
後半はずっと、西野亮廣の演説を聞かされてるみたいっていうのはあったけど、そこはまぁ、いい感じに処理されてるので、個人的にはそこまでは気にならなかった。…かな?
ただ、個人的には西野亮廣という人は、クリエイターというよりも作品を波及させたり売ったりする「システム」を作る方が得意な人だと思うので、「作品」作りはクリエイターに任せて、自身はその作品を応援する側に徹底するのがいいんじゃないかなと思った。