「ストーリーの体をなしていないです」映画 えんとつ町のプペル iceさんの映画レビュー(感想・評価)
ストーリーの体をなしていないです
登場人物の行動動機がでたらめなため
ラストにいくにつれて
自分がいま見せられているものは, いったいなんなんだ??
となっていきます
感情が動くと書いて感動なわけですが,
見ているほうの心の中がまったくの無風になります
(おかしなところが蓄積していってmaxを超えます)
一般的に,
社会のほうがおかしいのだ, というストーリーよりも
最初はダメだった主人公が最後には(ちょっとだけ)成長するストーリーのほうが感動するものなのですが,
この作品は前者です
( まれに, 最初から人としてできた主人公が, 社会のありかたを葛藤とともに探すストーリーもありますが, これを描けるのはとても優れた作家だけです, ナウシカ や アシタカ はそのように描かれています )
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信じること, というけれど, なにを信じることなのかがよくわからない
1.自分の才能 を信じること なのか
2.大好きだった人を信じ切ること なのか
(自分の好きだった人(父)が誠しやかな話を言いはじめたとしてもそれを信じること なのか)
1. は 西野さんの普段の活動から勝手に輸入されているだけで, 映画の中だけで見るなら, 別に描かれていないです
空に星があることは 自分の中に星があること(1.の文脈) のメタファーなのだ, というのは 絵本ならまだしもですが, 映画のストーリーとしては だいぶ苦しいです
2. は, 父でさえも 星があることは 自分の目で見たわけでなく, 人からの伝聞なので
なんなんだこの話は? となります
(それを信じようとするルビッチのほうがどうなんだ?? となる)
(パズーの父やポムじいさんのような説得力を観客にもたらさない)
さらに, 町全体が為政者によって仕組まれていた町だったのである
というオチなので, 町の人たち(社会)がそれ(星があること) を信じていないのも, 仕方なかったのでは? となります
それでいて 主人公は(ナウシカやアシタカのように)為政者と対峙したりすることもないです
ジャイアンのような人が後半で改心するのですが
これはおおむね 1. の文脈のことを描こうとしているのではないかと推測されますが
繰り返しますが 1. のことは 映画の中にはまったく描かれていないのです
町の人たちも改心し, そこには大人たちもたくさんいるのですが, そのほとんどが 為政者への怒りよりも, 主人公の応援(1. の文脈?) に向かいます
それで 結局, 為政者のしてきたことが, いいことだったのか, 悪いことだったのか 判然としない
そんなに簡単に結論の出るものではないのだ, というものであれば
主人公もともに葛藤しながら模索し, 為政者と対峙するような場面があったらいいですが
これも繰り返しですが, そういう場面はないです
(主人公はそんな難しいことを考えられるような歳でもないし)
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友達のいないルビッチに, 友達ができたらいいな, と父は願っていた
そして プペルがようやくはじめての友達となる
わけですが, 最終的に, プペルは父の分身である, というようなオチです
それって 友達ができたことになるのだろうか?
というのもあります
( 父との絆の話なのであれば 観客が混乱することを持ち込まないほうがいいし, 友達をつくる話なのであれば, 例えば 下妻物語 のように描いてほしい )
最終的には父との絆の話のように思えますが
そうなのであれば, 主人公の年齢がもう少し大人に近づいた年齢(つまり青年くらい)
のほうがいいと思います
どういう精神構造をしているとこのストーリーに感動できるのか
まったくよくわからないです
高評価の人はストーリーの中身を見ているのではなく それ以外を見ているのだと思います
-- 追記
もし本当に 1. の文脈を描きたいのであれば, ジャイアンのような人を主人公にして その変化(成長) を丹念に描くほうが, 観客にはごく自然に(押しつけがましくなく) 伝わると思います
( そういう名作はいっぱいあるのでは? )
なんて的確な考察と言葉のチョイス。
自分が言語化出来なかったモヤモヤが晴れて釈然としました。
感動する方は、サロンメンバーじゃなかったとしても少なからず西野さんの活動にシンパシーがあった皆様だと思われます。
そんな皆様は
「社会のマジョリティと感性が合わなくて漠然と不遇さを感じてる人」
が多く
そんな皆さんの
帰属欲求、自己実現欲求、承認欲求は
「映画が内容的も興行的にも成功だった」と思う事で報われるので、
感動しなきゃ、と自分に言い聞かせる心理は働くと思います。。
最近流行りの概念、「他者の夢をかなえるのが自分の夢、」ビジネス、
の大きな成功例ですよね。
絵はきれいでしたので、
脚本がちゃんと秀逸だったら
西野さんの軽いシンパ、程度の私もガチな信者になったかもしれないのに!笑笑