「普通に面白かったし感動までさせられた。」映画 えんとつ町のプペル HALU6700さんの映画レビュー(感想・評価)
普通に面白かったし感動までさせられた。
吉本興業の漫才コンビであるキングコングの西野亮廣さんが作り、現在もベストセラーになっている絵本を基にアニメ映画化した作品らしいと知った上で観に行きましたが、特段に、西野さんに対して肩入れする訳ではないですが、西野さんが色々と酷く誹謗中傷なされてられるほどに、とりたてて宗教的な内容でもなかったです。
割りとちゃんとまとまってもいましたし、至極分かりやすいお話しで、スチームパンクと昭和レトロな描写を併せたような世界観も個人的に好きでしたので、普通に面白かったし、不覚にも感動さえさせられました。
たしかにどこかで見たような既視感のあるシーンや展開も多かったのですが、それを持ってこの絵本の世界観の独創性の欠如とまでは言えないと思います。
むしろ、この映画や原作になった絵本の対象年齢から鑑みますと、夢にあふれたとても無難なお話しの作品でしたし、また、「普通」とは違う容姿や思考を持つ者は「異端者扱い」をして取り締まりの対象とされる世界観も社会風刺が利いていて、多様性社会についても訴えているような、なかなか見応えもある作品に感じました。
また、昨今は説明過多な映画が多い中、お話しの設定の補完を観客に委ねられても、そもそもが絵本が原作の童話なのですから受け手である観客個々人がそれらを自由に想像すれさえしたら良い話であって、説明不足云々については、私は特に不満にも感じませんでした。
冒頭のHalloweenのミュージカルシーンに始まり、トロッコのシーンなど手に汗握るシーンなど前半部分がアニメ映画的には特に面白く演出されてました。
この絵本が訴えるところは、「世の中を牛耳る一部の大人たちが、将来の可能性を秘めた子供の自由な選択肢を奪うことはあってはならない」といった主題かと思うのですが、ちょうど香港の民主活動家たちが中国政府当局に沢山逮捕されている最中にあることを鑑みますと、「普通」じゃない容姿や思考を持つ者を「異端者」として取り締まるといった世界観がそのまま社会風刺されている様にも思え、同調圧力に屈しがちな昨今の世の中を垣間見たようで、大人目線で観ても面白かったです。
それと、私は、この作品の製作にまつわる裏事情や背景事情についてはよく知らないのですが、映画を愛する者の1人でしたらば、そういった裏事情を以て、この作品を判断するのではなく、あくまでも純粋に、この映画の内容についてのみレビューや映画評をして欲しいですね。
散見されている批判を受ける意見の中にもあるように、たしかに、お話しの内容的には1時間未満の尺にもまとまるアニメ映画なのかも知れないですが、そもそもが絵本が原作なのですから、内容が希薄であっても当然なのであって、それを映画化に際してどのように膨らませるのかと考えた末に肉付けしていった結果、ようやく100分間といった映画になっただけで、脚本がどうだとか構成がどうのという次元ではなく、ただ純粋に絵本の世界観を大切にした結果、全体の構成がややアンバランスにも感じるアニメ映画になっただけなんだと思います。
それにも拘わらず、批判されている意見の中には、如何にも自らを映画通を標榜するかのように、「プロットが不完全過ぎる」だとかと、目くじらを立て著しい低評価を下す事にいったい何の意味があるのかと甚だ腹立たしく見苦しくて仕方がないです。
職人集団「STUDIO4℃」による映像美が相変わらず素晴らしいし、主人公の”星”を信じる少年ルビッチ役の芦田愛菜さんやゴミ人間・プペル役の窪田正孝さんをはじめヴォイスキャストも豪華。
特に、ルビッチ役の芦田愛菜さんと父親役の立川志の輔さんはエンディングロールのヴォイスキャスト名を観るまで気が付かなかったくらいに役柄と声が見事にハマっていました。
音楽もまた豪華。「L'Arc~en~Ciel」のHYDEが冒頭から歌い上げ、エンディング曲には、私はこの作品で初めて知ったのですが、美しい歌声の注目歌手・ロザリーナを起用するという贅沢さ。
私は知人が勧めるので、当初観る予定になかったこのアニメ映画『えんとつ町のプペル』を観に行きましたが、結果的には、あくまでも私見ですが観に行って良かったです。
従いまして、私的な評価と致しましては、
アニメ映画としての脚本面や構成でややアンバランスな面は感じつつも、この作品を総花的に捉えますと、なかなか面白い映画に仕上がっていたと思いましたので、五つ星評価的には★★★★の四つ星評価の高評価も相応しい映画かと思いました。
思わず、鑑賞後に、原作の絵本まで購入してしまうほどでした。