「2020年ワースト」映画 えんとつ町のプペル Yukiさんの映画レビュー(感想・評価)
2020年ワースト
ギャグはつまらないし、ストーリーテリング下手くそだし、こんな映画をスタジオ4℃が作ったのかと思うと悲しくなる。
開始5分でこの映画ダメだなと思ったのは、オープニングの挿入歌で盛り上げる場面を、縦横無尽にカメラを走らせて街のガジェット映したりせずに、着ぐるみ着た人たちのうざいダンスを延々と見せられる。ディズニーとかならここでちゃんと惹きつける。
どうも夢を語ると異端者扱いされるこの街は、現実世界のメタファーなのだそう。
現実には差別や貧困や環境破壊があるし、この街にあってもおかしくないんだけど、作り手はそういった話題には興味がないらしい。
夢を信じる者vsそれを嘲笑する人々といった二項対立に矮小化させてしまっている。
街の成り立ちを説明した場面、資本主義批判のつもり(?)かもしれないが、あまりに滅茶苦茶過ぎて唖然とした。時間が経てば消えて無くなる通貨なんて誰も取引しないだろ(笑)。なぜ経済学者が通貨を発明出来るんだ。通貨発行権は政府が独占しているものだし、「中央銀行」は取り締まる機関じゃないだろ。
経済学の知識以前に、作り手の社会常識を疑わざるを得ない。
空には星はあるし、そんなもの観てる人間全員が知ってる。カタルシス生じる余地がない。
途中、藤森慎吾演じるキャラクターがこの世界のあらましを言葉で全てネタバラシするのとかほんと上手くないし、父が語る理由も藤森から全部聞いただけというのもあきれる。
主人公が「誰も観てないのに決めつけるな!!」と大演説するセリフは、そっくりそのまま自分に返ってきても完全に成立する。父が本当のホラ吹きだったらどうするのだろう?それでも信じることが「良きこと」なのだろうか?
あれは父親が変な絵師ではなく科学者で、コペルニクスのように地球の上には宇宙が広がっているんだという合理的な推論を行った結果、ガリレオのように異教徒扱いされる話だったらまだ良かったのではと思う。
同じスタジオ4℃製作、芦田愛菜主演のアニメ映画なら、昨年公開の「海獣の子供」の方が圧倒的に優れている。ファンタジーではあるが生命の起源や宇宙の仕組みについて観客の関心が行き届く素晴らしい作品なのでぜひそちらをお勧めしたい。