「ポケモン映画の中では悪役のヒールっぷりがずば抜けてる」劇場版ポケットモンスター ココ かちかち映画速報さんの映画レビュー(感想・評価)
ポケモン映画の中では悪役のヒールっぷりがずば抜けてる
「どうせよくあるターザン系でしょ」観る前はそう思っていた。しかし、観賞後はポケモン映画No1になった。面白かったポイントは3つある。
1つめは、ザルードとココの絆に感情移入できること。
この映画は登場人物が最小限でスッキリしている。サトシの仲間は居ないし、ロケット団の出番は少なめで、悪役はゼッド博士のみ。主に出番があるのはココとザルード2人のみなので、最初から最後まで彼らに寄り添える。そのためココとザルードにどっぷり感情移入できるのだ。キャラがごちゃごちゃしがちなポケモン映画で、誰が主人公で誰に感情移入できるか、をハッキリさせてくれたのが良かった。
父と子の絆というテーマもドストレートでわかりやすい。セレビィ映画のように環境破壊や侵略もテーマなんだろうけど、自分は親子の絆に心を打たれた。
ザルードが死にそうになるところで焦ったわ。ザルード死んだら2回も親無くして、ココがあまりにも可哀想だと思ったから。助かってよかったよ。
最後の花火で見送るシーンも最高に好き。ザルードじゃ花火は打ち上げられない伏線がここで活かされる瞬間。花火と同時に「ふしぎなふしぎな生き物」が掛かるのは反則でしょ。トータス松本の歌声が染みる。死にそうなる所と花火は、映画で絶対泣かないマンの俺が、あやうく涙するところだった。
2つめは、悪役のヒールっぷりがずば抜けていること。
ココの両親ぶっ殺したり、強引に森に侵略したり、今作の悪役ゼッド博士は超外道。最初は良さそうな人に見えたのに豹変するのも怖い。今までのポケモン映画の悪役がぬるく見えるレベル(ゾロア映画のコーダイを軽く超えた)。ココの両親が炎上するシーンは、子供にはショッキングかもしれない。ヒールっぷりが凄まじいおかげで、ココと共に怒りに震え感情移入できるのが良い。博士に両親殺された、と知った時のココの気持ちはショックだったろうなぁ。
ゼッド博士VS森のポケモン軍団とのバトルシーンも熱い。博士のロボット強すぎて味方サイドが劣勢に立たされるのドキドキした。さらにロボ2.3体増やして絶望感UPさせて、大乱闘を熱くさせても良かったかも。
3つめは、ハズレ声優が居ないこと。
ポケモン映画お約束のクソ下手なタレント声優が居ないので安心して観れる。特にザルード(中村勘九郎)が上手くてしっくりきた。喧嘩っ早そうで、不器用な父親って感じが出てて、ザルードの雰囲気とベストマッチ。声優見るまで誰が演じてるか全く分からんかったわ。
悪役のゼッド博士に山寺宏一を当てたのは英断。このキャラをプロ声優以外が演じてたら、せっかくの外道っぷりが台無しになってたと思う。セレビィ映画の時のマジシャンも良かったから、山ちゃんは意外と悪役合うのかもしれない。
気になった点は、サトシとピカチュウが空気だったこと。
今作のサトシとピカチュウは傍観者で活躍少ない。もちろんあくまで主役はココとザルードだから、出番少なめでいいのだけれど、これなら別に居なくても良かった気が...。ピカチュウなんて10万ボルトとアイアンテール数発撃っただけだし。
サトシとピカチュウ抜きにして、ザルードとココの絆をより深く、ポケモン外伝にしても楽しめたかも。
まさかポケモン映画で好きな『ミュウツーの逆襲』『水の都』を超えてくるとは思わなんだ。ポケモン知らなくても、子供の付き添いの親でも、万人に楽しめる作品。物語の舞台は夏だけど、クリスマス公開にぴったりな優しい気持ちになれる映画だった。