「どうして中々悪くない」STAND BY ME ドラえもん2 サブレさんの映画レビュー(感想・評価)
どうして中々悪くない
あの悪夢のような宣伝映像を見て嫌悪感を露にした人も多いのでは。あるいは、もともと前作が嫌いだったり「ドラ泣き」と言う言葉が嫌いだったりして、観る前から結論を出していた人は大勢いたでしょう。
しかし露悪的な『泣かせる』描写はそれほど多くはなく、それどころか魔界大冒険を思い出させる時間旅行ネタなどSF的に面白い描写もあり、製作者の真摯さが見える作りであったと思う。特に前半部分は。
もちろん観る前は結婚前夜とおばあちゃん、泣けるエピソードの悪魔合体かよ~と呆れに似た思いを抱いていた。しかも結婚に対して不安になるのがのび太の方かよ~と憤懣やるせない気持ちも抱いていた(原作では不安になるのはしずかちゃんの方)。
しかし結婚前夜での泣ける部分(しずかパパとしずかちゃんのあのやりとり)がそもそもなかったし、おばあちゃんに『お嫁さん』を見せるという流れから無理なく結婚式につながっていて、これを悪魔合体と呼ぶわけにはいかない。いやむしろでき映えに感心した。
そして、最も不安だったのび太が結婚に不安を抱いて逃げ出すという部分。これは偶然がトラブルを生む、いかにも『ドラえもん』的な展開で理由付けが行われていて、普段の映画ドラへのリスペクトを感じられた。ドラえもんがよく「あの道具のせいでこんなことに!」ってやってるでしょう、あれです。
とにかく、あの宣伝映像から想像されるようなお涙頂戴!感動、君も泣け!という話では全くないし、むしろ冒険に出ないだけで普段の映画ドラと同じような冒険ものという見方も可能。というか、新恐竜の方がよっぽどお涙頂戴!君も泣け!だったでしょう。SF的にも不誠実だったし。
ただ、突っ込みどころはあった。観た人にはわかるだろうが、大きいところだと次の2点。「結局どうしてのび太は結婚式に間に合わなかったの?」と「道具に諦めるなって根性論ぶつけるのはどうなの?」。とくに前者。ほかのいろいろな点ではSF的整合性を気にしてたのに、物語の根幹がすっぽ抜けてるのはちょっと…。
細かいところを数えればもっとあるが…まあ、全体としてはかなり面白いですよ。