「最後は支離滅裂。」ジェイコブス・ラダー Naakiさんの映画レビュー(感想・評価)
最後は支離滅裂。
New York may be a crazy town,
but you'll never die of boredom.
Enjoy!
HELL.
Tha's what life can be, doing drugs.
But it doesn't have to be that way.
Help is available, day or night.
CALL THE DRUG HOTLINE……
これは1990年アメリカで公開された前作の冒頭の場面でベトナムにいたと思っていたジェイコブが目を覚ますとニューヨークの地下鉄の電車にいることに気づき、彼が電車の広告に目をやるとこの不思議なといってもよい文字が目に飛び込んでくる。
前作の主題は、下記に書いてある通りで、映画自体はいくらヤコブの梯子という題名でも宗教臭くはなく、むしろサイコホラーと言える映画作りがされていた。しかし、最後だけはどうしても話を終わらせなければならないのでマコーレ・カルキン(クレジット無し)演じる三男のゲーブが、いわゆる神のお告げを知らせ、最後の審判にも登場する通信事業の守護者でもある三大天使の一人と同じ名前の彼が、手を差し伸べるくだりとなっている。
If you're frightened of dying and you're holding on,
you'll see devils tearing your life away.
If you've made your peace,
then the devils are really angles freeing you from the earth.
自分の魂の平和なくしては、死神が天使になることはなく、天国にも導いてくれない様子をジェイコブが体現し、そしてそれが分かったのちガブリエルが迎えに来る大人の幻想的ファンタジー要素もあった作品と記憶しているが.....
1973年にベトナム戦争はパリ協定で終結し、その2年前の1971年に映画の設定をしていたので、当然と言っていいほど交通機関の要である地下鉄は荒れ果て街全体が暗く汚れている。タクシーなんかもハーレムに行ってくれという言葉を嫌っているように描かれていた。そんな現代の地獄のような世界観から、この映画はどうかというと、地下鉄は真っサラサラで街並みも高層ビルや奇麗なハイウェイなんかもあり現代的その物で、シナリオ自体もラストを含めジェイコブの立場も180度違うものとなっているので、前作の記憶がなかったり、見ていない人になら受け入れられるかと言えばそうでもなさそうな物語となっている。
jumpscareと呼ばれる現在のスリラー映画やホラー映画では欠かせない手法を使うことでスリラー映画の質を下げる怠慢な手法の一つとして批評家からは警鐘を鳴らされていて、この映画でもその手法が多く使われている。つまり安直な映画で、前作のオマージュを思わせる場面も多少なりともあるが、このラストでは、別に「ジェイコブス・ラダー」の題名を付けて恥をかく必要がなかったかもしれない。きつい言い方でした。すみません。謝るぐらいなら、書くなってか?
旧約聖書で兄とのいさかいから逃げたヤコブさん。その途中で見た天国と下界をつなぐ階段を天使が上ったり降りたりしている夢を見たおかげでイスラエルの始祖となった人。
ここでもイスラエルの名前の語源なんかも知ることのできる面白いと言っては語弊があるかもしれないが、デンマーク・ドイツ合作映画「アダムズ・アップル(2005)」でも見られるように案外旧約聖書の教訓ポイところは映画の題材にもなるし、日本でも小説や漫画やゲームに多数インスパイヤされていると言える。