恐竜が教えてくれたことのレビュー・感想・評価
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児童文学が原作ながら、むしろ大人の心に深く訴えかけてくるものがある
本作にはタイトルのように恐竜が出てこない。ただ、柔らかいタッチの映像世界の中で、自らを「(絶滅寸前の)最後の恐竜に共感する者」と称する少年が登場する。言い換えれば、彼もまた孤独な恐竜なのだろうし、一緒にバカンス中の家族、島で出会う少女やそのママ、その他の登場人物たちも、各々が確固たる恐竜のようだ。
人は生まれながらにして一つの個体でありながら、決して一人ぼっちでは生きていけない存在だ。そんな当たり前のことを、我々は大人になると目の前に靄がかかったかのように失念してしまう。本作はその靄を取り払う、穏やかな光となりうるだろう。児童文学の形を借りながら、実は存在や不在、孤独、生命、記憶、家族、社会などの様々な哲学や概念(こういった言葉でくくると途端に硬くなってしまうが)について少年が緩やかに思考をめぐらせる構成とテーマ性は驚くほど深い。ひと夏の初恋と思い出が甘酸っぱくも温かな余韻を残す名作だ。
魅力あふれる小品だが、邦題が惜しい
ボーイ・ミーツ・ガール、少年少女の成長譚、生き別れの親に会いたい子の思い、といった共感しやすい主題や要素が詰まった佳作。主人公のサムが大人びた多感な少年で、最後の恐竜の死や孤独を想像するとのエピソードから邦題の「恐竜」が選ばれたのだろうが、正直、作品の魅力を伝えているとは言いがたい。原作小説の邦題は「ぼくとテスの秘密の七日間」で、こちらの方がまだ内容に近い。
サム役とテス役の子役2人はともに愛らしくキュートで、状況は大きく違えど「ジョジョ・ラビット」の主人公ジョジョとユダヤ人少女の関係性と似ている。初めて恋を知る10歳前から10代前半の頃は、少し年上の女子に振り回される男子に淡い恋心が芽生えるという流れが自然なのかも。
ロケ地になったオランダの小さな島はおとぎ話のように美しく、2人を取り巻く大人たちも個性はそれぞれあれど一様に優しい。シンプルではあるが、心が温まり癒される一本。
孤独と想い出づくり
ひょっとしたらSFなんだろうか、と思いながら、なかなか恐竜が出てこなくてハラハラしました(笑)。11歳の少年サム(ソンニ・ファンウッテレン)と少し大人びた少女テス(ヨセフィーン・アレンセン)がとびきりキュートでよかったですね!「地球最後の恐竜は自分が最後と知っていたのか?」、「末っ子の自分は、最後に死ぬから孤独に慣れる訓練が必要」とか、そういえば少年時代に似たようなことを想像して、勝手に悲しんだり、苦悩していたなぁと懐かしくなりました。児童文学を大人になって読むときと同じように、心の奥の方にあってすっかり忘れていたピュアな感情が蘇りました。ヘミングウェイみたいな老人ヒレ(ハンス・ダゲレット)とのちょっとしたエピソードが、この物語の大切なエッセンスになっていたり、脚本がとてもよくできていたと思いました。そしておそらくは、初長編作品となるステフェン・ワウテルロウト監督のこの物語(原作)への深い愛情が作品を通じて伝わってきて、すべてのシーンがとても愛おしく感じられました。エンディングも最高で、大好きな作品になりました。
優しい
こういう映画大好き。
これは綺麗過ぎって思う人もいると思うけど、これが現実に難しいってなってることが、本当の問題なんだと思う。
邦題はセンスがないけど、内容はファンタスティコ!本当に素敵な映画。おススメです!
オランダ児童文学の世界
原作を読んだことはないが、いい脚本だった。
主人公二人を演じる役者さん達も可愛いかった。
私も主人公の男の子のように、夜になると、死ぬことについてわからないなりに考えたりして、心細いような気分になっていた子供の頃を思い出した。ただ、私は末っ子ではなかったので主人公のように、最後に自分が生き残ったあとの心配はしなくてよかった。というか、思いつかなかったろう。作品中の男の子は、心配するだけではなくその事態に備えてのトレーニングをするところが子供らしからぬしっかりさだ。遠い未来を心配しすぎて今を忘れてしまっている感も。でも、テスというシングルマザー家庭の女の子を助け、見知らぬ老人に助けられたりして、変わる。
見終わってほっこりした。
オランダの避暑地の出来事
両親と兄の4人で避暑地にやってきた主人公は、ちょっと変わった11歳の少年。
家族の中で一番若いので、みんなが先に死んでしまい、一人ぼっちになるのを恐れ、孤独に耐える訓練をしている。
そんな主人公は地元の、これまたちょっと変わった少女と知り合う。
家族感が説教臭くなくて好感が持てる。
昨日鑑賞、二本立て一本目。 将来の孤独に備えるゴキブリ博士とまだ見...
昨日鑑賞、二本立て一本目。
将来の孤独に備えるゴキブリ博士とまだ見ぬ父との再会を企む少女、成長の休暇。
まず感じるのはいい所だなあ、行きたいなあってこと。そして少年の家族が暖かい。
特に大きな出来事があるわけではないが、ほっこりさせてくれる作品。今はひとりとなっているおじさんの台詞が全てです。
私は「勘違い」という結末を予想していたのだが…ちょっとなんかうまく行きすぎ(笑)
児童文学の名著が原作とのこと。原作通りの題名でよかったんじやないの。
私と同じだ!
私も子供の時に、『恐竜にも感情があったのか?』や『皮膚の表面にあるのは鱗の名残なのか?だったら、恐竜の感情も遺伝している』とか、考えてました。想像力が豊かだったなあ。
そう、あの世に持っていけるのは、大切な思い出とその思い出を愛しむ心。あの夏にサムと出会わなかったらテスは父親との思い出を作れたのかな?
人との出会いとタイミングで、人生が全く違う方向に行くから人生は楽しいのです。また人と出会いたくなってバカンスにも直ぐに行きたくなる作品でした。
好奇心の塊みたいなコックローチボーイ
家族でひと夏のヴァカンスを過ごす間に、こんなにも多くの経験ができるなんて!
一週間のはじめから、帰るまでの毎日がとても丁寧に描かれていて、死とか、家族とか、友情とか、孤独とか、愛とか…テーマは盛りださんだけれども、少年の目を通して、きちんと描かれていています。
何より好感が持てたのが、この少年がいろんな人との出会いを繋げていくところ。
子どものピュアな気持ちは、人を素直にさせるのかな。
邦題、残念(笑)
サムとテスの思い出とか(陳腐だね)ほかになかったかな。
孤島に一人とか、地球脱出とかじゃなくて、最後の恐竜に思いを馳せるあたり、ニクイなあ〜と思いました。
人を思いやるセリフが、ホンワカした気持ちにさせてくれます。
ヒレおじいさんの言葉に涙
映像が美しく、海や空のコントラスト、描写が絵画を観ているようだった。
そして、主人公が過ごしたSummer vacationは驚くほど濃く、長く、彼の今後の人生に深く影響を与えたに違いない。
11歳って思春期に入るか入らないかの微妙なライン、女の子との甘酸っぱい恋、人生ってなんだろうと考えたり、自分を確立しようとする時期で、そんな彼が過ごした7日間は宝石のようにキラキラしていた。
個人的にこの作品の一番大事な部分はヒレおじいさんとの対話のシーン。この言葉を聞き、思わず涙が流れた。
映像美、詩的な言葉、音楽、映画は総合芸術。だからやめられない。
84分に凝縮された思い出の共有
バカンスで島に来た少年がそこに住む人たちとの交流から生きるという喜びを知るお話。
84分という映画としては短いなかで、話の展開が早いわけでもないのにとても濃く、良い意味でお腹いっぱいになる映画です。
タイトルにある恐竜は、「地球上の最後の恐竜は自分が最後って分かっていたのかな?」という主人公の疑問からのもので、恐竜が出てくるわけではありません。
子どもの頃、僕も主人公のように死んだらどうなるんだろう、とか考えて勝手に悲しくなってました。そんなことを一度は考えたことのある人は主人公に共感できるかもしれません。
主人公が出会う女の子テスが可愛らしい。少し破天荒な感じですが、思春期だし納得できる理由もあるし、フランス映画によく出てくるような高慢な女性とは違い、感情移入もできます。
ラストは一体どうなるの?と不安でしたが、予想以上に良いオチでした。ひと夏の恋なのか、今後も続く恋なのかは分かりませんが、人と人は短い時間でも思い出を共有することに意味があると教えてくれます。
誰もが幸せになるような素敵な映画を、是非この機会に劇場でご覧ください。
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