「逆境の中を力強く生きる人々の「物語」」ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語 といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
逆境の中を力強く生きる人々の「物語」
私は本作が昨年劇場公開された時は、予告編などを観てもあまり興味が湧かなかったので鑑賞していませんでした。しかし、多くの映画レビュアーさんたちが2020年の映画ベスト5の中に本作を挙げているのを見かけ、鑑賞していなかったことを後悔しました。アマゾンプライムで鑑賞できるようになりましたので、このタイミングでの鑑賞になります。原作となるルイザ・メイ・オルコットの小説『若草物語』は見たこと無く、ざっくりとしたあらすじを知っている程度の事前知識での鑑賞です。
結論ですが、非常に楽しめました。本作は今とは比べ物にならないほどに抑圧的な時代に生きる人々を描いた物語です。時代に翻弄されながらも懸命に生きるその姿には勇気をもらうことができますね。単純にストーリーだけ追ってても面白いですが、特に私はあのラストシーンに舌を巻きました。映画の終盤の、結末を観客の判断に委ねるような「物語論」の提示は思わずため息が出てしまうくらい良かったです。
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マーチ家の4姉妹が南北戦争時代の厳しい荒波の中でも自分たちの夢のために力強く生きる物語。「女は金持ちと結婚して家庭に入るのが一番の幸せ」という価値観が色濃い時代において、マーチ家のジョー(シアーシャ・ローナン)は小説家になる夢を持っていた。
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ラストの展開に何となく見覚えがありましたが、『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日』という映画にちょっと似ている気がします。詳しいことはネタバレになるのでここでは書きませんが、ラストシーンで「そういうことか」と膝を打つような感覚は本作と近いですね。
時代の流れに翻弄され、その時代で必死に生きる強い人たちが描かれている映画だったと思います。予告編の映像であったり主人公が女性ということで「強い女性を描いた女性向けの作品なのかな」と思っていましたが、実際観てみると全然そういうわけでは無かったですね。「(男女関係なく)弱い立場の人が逆境にめげず頑張る」という感じでした。男目線で刺さる描写も多かったです。特に長女メグの夫が貧乏貴族であるという点は思わず夫目線で見てしまいましたね。最近読んだMIT教授のダン・アリエリー氏の書籍に「給料の満足度は、妻の姉妹の夫との比較で決まる」という一文がありまして、それを考えると三女のエイミーがお金持ちであるローリーと結婚したことによって更に惨めな気持ちになってしまうんじゃないかと勝手に深読みして同情してしまいました。
ラストシーン、自分の本の製本過程を見つめるジョーの眼差しや出来上がった本を抱きしめる姿は非常に感動的です。小説の製本という「物語」が完成する描写で、映画という「物語」の締めくくりをする演出はお洒落で良かったですね。
非常に面白く、絶対に観て損はない名作でした。オススメです!!