劇場公開日 2020年3月14日

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「【”カネマサが”嫌な事を忘れることが出来るから・・”と言いながら虐待を受けていた女の子マユにアイスを食べさせながら、自分は口にしなかった訳・・。】」ひとくず NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”カネマサが”嫌な事を忘れることが出来るから・・”と言いながら虐待を受けていた女の子マユにアイスを食べさせながら、自分は口にしなかった訳・・。】

2020年12月22日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

幸せ

ー上西雄大さんが、ご自身の辛い経験を基に、今作を製作され、世に児童虐待の事実を伝えようとした姿勢には、素直に頭が下がる。ー

 ■沁みた点
 ・若き日の”カネマサ”が愚かしき母親の愛人に虐待を受けながら、健気に耐える姿。
(というか、病院関係者を含め、時代的に虐待に気づかなかったのだろうか・・。気づいていても、申し出る機関がなかったのであろう・・、もしくは世の中に児童虐待と言う観念が薄かったのかもしれない・・、と推察。)
  何しろ、実際に経験している上西雄大さん自らが脚本を書いておられるのだから、事実だったのであろう。
 現在も含め、どれだけ多くの子供たちが、今作のマユさんのような、辛い目に会っているのだろう・・、と考えただけで・・。

 ・カネマサの粗暴な性格形成の理由と、それでも自分の幼き日をダブらせたマユを”何とかしよう・・”という思い。(多分、深い理由はない・・。)
  マユからの小さな声での ”有難う” という今までカネマサが聞いたことのない言葉が引き金になったのであろう。

 ・カネマサが、初めて、”家庭を持ちたい:独りはもう嫌だ・・”という思いに駆られていく過程。

 ◆一点だけ述べるが、幼き日に児童虐待を受けながら、それをバネにし、社会的な成功を収めた方、市井人として細やかな幸せを掴んだ方はいる。(複数、知っている。)
 なので、幼き日に辛い思いをしても、今作の”カネマサ”のように、”一滴”の人間の善性を保ち、マユに救いの手を差し出す男。及び、カネマサと同じく、親の愛をキチンと注がれなかった、マユの母親の人物造形が”少しだけ、類型的ではないか・・”と思ってしまった作品でもある。
 ー 児童虐待をした方全てが・・、と言うように見える部分があったためです・・。ー

 ◆劇場公開の映画として、気になった点。
 ・無理やり抒情的な雰囲気に持って行こうとする”昭和枯れすすき”的な、大仰な挿入曲。

 ・カメラワーク。特に暗い部屋のシーンの撮り方。

 ・大変、申し訳ないが、マユさんを演じた子役の方以外の演技が・・。

<劇場公開作としては、粗さが気になる点が幾つかあるが、それ以上に上西雄大さんの強い想いが伝わって来た作品。
 初期衝動とまでは言わないが、観る側の心に響くモノを齎した作品である事には間違いない。
 現代でも、大きな問題になっている”児童虐待問題”に、正面から向き合い、真摯に世に問いかけた作品でもある。>

<2020年12月20日 刈谷日劇にて鑑賞>

NOBU