「夫婦は娘を戦場に連れ戻した。」娘は戦場で生まれた bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
夫婦は娘を戦場に連れ戻した。
ごめんなさいね。あえて、イヤらしく、こんな言い方をしてみました。
内容は「活動家女性の母としての記録」でした。
アラブの春は遠い遠い昔の話。外国の過激的勢力に乗っ取られた代理戦争は、内戦なんて簡単なもんではなく。近年はSNSによる情報戦が繰り広げられており、アサド政権を支援するロシア・イラン、反体制派を支援するサウジ・トルコ・カタール、難民・民間人犠牲者・ロシアによる空爆をセンセーショナルに報道する西側メディア、と有史上最も複雑な内戦、と言っても過言じゃないくらいに酷い。
内戦の残虐性を生々しく伝えてくれるこのドキュメンタリーに、ただ一つ疑問を投げかけるとしたら、「なぜ娘をアレッポに連れ戻したのか?」。まぁ、トルコだって安全ってわけじゃないですけどね。
ちなみに、米国がこの1月にバグダッドで殺害したイラン革命防衛隊のソレイマニー司令官は、この内戦におけるイラン軍の関与に指示を与えていたとされる人物。米軍はシリアから撤退していますが、関与は継続している。
声を上げてくれ。頼むから泣いてくれ。泣き声を上げろ。泣け。泣け。泣いてくれ。
妊娠9カ月の妊婦と胎児。逆さにされた胎児の瞳に光が宿り、鳴き声を上げた時の嬉しさは生涯忘れられない。ここだけは感動した。
シリアのドキュメンタリーとしては衝撃的ですが、扇動的でもあり。いや、最後に「Justice」の言葉さえ見なければ、違う思いを抱いてたんでしょうけどね。あそこに、正義なんて存在しないでしょ。子供の命を守る事は正義ですけどね。アサドを倒すために国際的な介入を求めると言うような内容のコメントもありました。ロシアの無差別な空爆を非難するのは判ります。しかし反体制で最も残虐なISILの掃討が開始されている時点で、アレッポに留まるのは、さすがに無理なのではないかと言う気もする訳で。
なんか、やっぱり、ちょっと気分複雑かも。