劇場公開日 2020年2月29日

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「空爆の悲惨さがそのまま」娘は戦場で生まれた コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0空爆の悲惨さがそのまま

2020年3月3日
iPhoneアプリから投稿

シリアの「アレッポの戦い」 (2012-2016)を、一般市民の視点からビデオカメラで取材したドキュメンタリー。
スマホ撮影での配信経験からジャーナリストになり、医師と結婚してアレッポに住み、妊娠・出産した女性が、5年間回し続けたビデオを編集して撮影したもの。

過度に演出したものではなく、ただ事実を知ってほしい、という思いの羅列であり、観る者の心を打ちます。
ニュースで「空爆がありました」「市民の被害者は●●人」と見聞きするのとは全く異なる、そこで生きた人々の苦しみがそこにありました。

「アレッポモデル」といわれる政府軍による包囲・攻勢(殲滅)と、国連や諸外国の仲介を通じて反体制派を退去・投降させ、政府の支配を回復する手法が、いかに非人道的かがよくわかります。
自由と平和を希望し、故郷から離れたくないと願いながら、非武装で暮らしている人々の家や病院まで空爆し、虐殺を繰り広げているからです。
遊んでいただけの子供たちの手足がもげ、大人のはらわたがはみ出て、息を引き取る。
モザイクは一切なく、死んだ子供の顔も、泣き叫ぶ親の顔も、床に拡がる血や皮膚や筋組織・内臓も、まったく隠されることなく映っていました。
加担したロシアを含め、アサド政権のやり口は許しがたいと思いました。

ただ、この作品だけでは、わからないこと、伝わりきらないこともあったと思います。
2014年くらいまでのISILを筆頭としたイスラム過激派組織については撮っていたりセリフで言及したりはしていても、2015~2016の反体制派が政権側軍と戦闘を繰り広げていることは、発言を含めてほとんど触れられていませんでした。
なので、戦闘する反対勢力の武闘派とはつながってないのか、つながっているけどあえて伏せているのか、といった距離感の判断がつきませんでした。
戦闘が続いていること自体を知らない、と判断していいのか?すでにスマホが普及した年なので、知らないのはむしろ違和感があり。
「編集」が、事象の意味を意図的に変質させることが可能なことを知っている身には、「これが全て」と受け取っていいのかと悩む部分もありました。
疑い深い性格ですんません。

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コージィ日本犬