「ガバガバ設定が気になりすぎて集中できなかった」名探偵コナン 緋色の弾丸 バソラプンテさんの映画レビュー(感想・評価)
ガバガバ設定が気になりすぎて集中できなかった
子供向けアニメにこんなことを言うのは野暮だとは思うのですが、あまりに酷すぎたもので。
ツッコミどころが多すぎてどこから突っ込んで良いのかわからず、ストーリーに集中できませんでした。
① まず、タイトルにもなっている弾丸の件。
映画では、時速1000キロで走るリニアを、弾丸が同速度で追いかけて行って、リニアが減速した瞬間に命中しています。しかし、普通のライフル弾は時速3000キロ前後です。時速1000キロのリニアに向けて撃ったら、相対速度時速2000キロで、あっという間に命中しています。
また、リニアの磁石にくっつかないようにと、特製の銀の弾丸を使ったらしいのですが、そもそも普通の銃弾も鉛なので、磁石にはくっつきません。わざわざ銀の弾丸を使った理由が何一つ無いのが気になりました。ちなみに科学的には、磁界中を銀のような導体が移動すると、電磁誘導によって渦電流が生じ、抵抗が生まれてあっという間に失速して地面に落ちます。
更にシナリオ的にも、「リニアが減速したから弾丸が追いついて命中した」と言ってますが、思い出すと、コナンくんがリニアを減速させるより前に、犯人が一度減速させてます。何でその時に命中しなかったのでしょう?
そもそも、リニアの路線が曲がっているのに、真っ直ぐ飛ぶ銃弾が命中できたのは何故なんでしょう?
② タイムスケジュールがおかしい
時速1000キロで先発したリニアに、時速300キロの後発した新幹線が追いついたり、そこから更に途中下車した犯人の車が先回り出来るのが理解できませんでした。
一応、「実は新幹線が1時間以上前に先発していた」という設定ならわからなくも無いのですが、そのような描写はなかった気がします。
③ クエンチの件
最初のMRIのクエンチで、灰原がいきなり「これはクエンチよ!」と気がついてますが、何故クエンチとわかったのか描写されていません。一応、ヘリウムガスを吸うと、いわゆる「ダックボイス(甲高い声)」になるので、それで気がつくとか、低音のガスなので、寒くなって気がつくとかならあり得ますが、そう言った描写はなかったように思います。超能力で分かったんですかね?
また、ヘリウムガスが充満して窒息すると分かっていたなら、灰原がコナンくんにいうべき台詞は「逃げて」ではなく、「窓を開けて」とか「窓ガラスを割って」とかだと思うのですが、流石の灰原もパニックで間違えたんですかね?
あと、クエンチが起きると、MRIの磁力はゼロになるはずなのに、MRIに鉄製品がくっついたままだったのもちょっと引っかかりました。
④ 犯人の動機
何より気になったのが、真犯人がFBIを恨んでいる動機です。
「社長の父親が会社を追われたから」らしいのですが、父親が会社を追われた理由は「父親がテロリストに屈したから」であって、「FBIが犯人を取り違えてテロリストを取り逃したから」ではありません。何で真犯人はFBIを恨んだのでしょうか?
あと、「父親が誘拐犯のテロリストについて何も証言せず、テロに屈した理由」が何一つ明かされなかったのもモヤモヤポイントでした。
⑤その他
他にも、コナンくんの身体能力すげーとか、高速を子供がスケボーで走ってて通報されないのかとか、あんだけ大きな事故なのに全員軽症で済んだとか超人ばっかりだなとか、ピンチなのに毛利探偵がのんびり櫃まぶし食ってるのかよとか、新一が蘭に「守るのは俺の方だ」なんて言ってたのにピンチになってるのはコナンくんの方じゃないかとか、誘拐されたアランがスーツケースの中に閉じ込められて身動きできなかったのにどうやって栄養ドリンクを溢したりペンを外に落としたりできたんだとか、犯人わかりやすすぎだろとか、色々ツッコミどころ満載でした。
まあ、ガバガバ設定でしたが、ギャグアニメだと思えばそれなりにシュールで笑えたので、星1にしておきます。
哀ちゃんの件はコナン君に話しかける前にそういった症状を感じていたのなら問題ないし、小五郎の件はロケ地である名古屋名物を描きたいという制作側の気持ちが表れたものです。
それよりも、わざわざ大学教授に時速1000キロは可能か聞きに行って、真空なら可能かもと言われたためトンネル内でどうスピード感を出すかこだわったり、説明的になり過ぎないよう気をつたりしている部分などに注目して欲しかったと、1ファンとしては思います。
銀の弾丸にしたのは、黒の組織を倒すことのできそうな人物を、狼男の伝説になぞらえてシルバーブレットと作中で読んでいるからだと思いす。
栄養ドリンクの件ですが、アラン会長はペンを持っていました。ペンがあると、中からでもチャックを簡単に開けられるそうです。前作の「紺青の拳」で、コナンくんがボールペンでキッドに閉じ込められたスーツケースから脱出するシーンがありましたので、ファンならすぐピンときたのだと思います。