「最近のコナン映画では一番好き。ちゃんと「コナン」だった。」名探偵コナン 緋色の弾丸 レイトさんの映画レビュー(感想・評価)
最近のコナン映画では一番好き。ちゃんと「コナン」だった。
最近のコナン映画、特にゼロの執行人と紺青のフィストは、どこか「コナンであってコナンじゃない感じ」があった。確かに完成度は高いかもしれないけど、コナンのセリフとか、登場人物の動かし方とか、そもそも映画自体の空気感とか、どこか知ってるコナンじゃない違和感があった。特に登場人物間の会話はかなり違和感が強かった。
今回も、予告からしてゼロの執行人の赤井バージョンという印象だったし、赤井というキャラ自体そこまで好きじゃないし、何よりゼロの執行人を期待値上げて観に行って大きく裏切られた経験があったので、かなり期待値を下げて見に行った。
…ところがどっこい、初めから終わりまで、終始ちゃんとコナンらしい空気感、コナンらしいセリフや登場人物間の会話、コナンらしい物語のテンポ、コナンらしい登場人物の動き方が貫かれた、正真正銘のコナン映画だった。
「映画の空気感」というものは何とも言葉にし辛いのだけど、ゼロの執行人と紺青のフィストの何とも言えない「コレジャナイ」空気感というか、「ほかのジャンルの映画をコナンのキャラ使ってやっている」と思ってしまう様な違和感が本作には皆無。空気感そのものが「コナン映画」で、久々に「コナン映画を見た」という満足感をもって劇場を出ることができた。
ゼロの執行人とは違い、赤井の活躍はほどほどに、他の登場人物にバランスよく活躍を割り振っていたのも非常によかった。こういうバランス感覚のコナン映画がずっと見たかった(昔はもっとこれくらいのバランス感覚で多くの登場人物の活躍を見せてくれていた気がする)。一人一人のキャラの好さもしっかり演出できていたと思うし、監督とはかなり相性がいいかもしれない。秀吉由美のパートを始めとして、ギャグとシリアスのバランスも非常に好みのものだった。映像の見せ方も紺青のフィストの時よりかなりわかりやすく洗練されていて好印象。
特に味噌汁零すシーンでの小五郎と蘭の間の会話は白眉。ゼロの執行人と同じ脚本家とは思えない程、きちんと小五郎と蘭それぞれのキャラを的確に掴んだ絶妙な温度の会話に仕上がっており、本当に感動した。
事前の期待値が全然高くなかっただけに、見終わった後は「本当に良かった!2年待った甲斐があっった!」と晴れやかな気持ちで劇場を出ることができた。
私は今後もこのバランス感覚で、この監督のままで、この方向性で制作していって欲しいのだが、巷では不満が多い様なので、世間的にはゼロの執行人の様な方向性の方がウケがいいのかもしれない。
感想を読んでいても、ゼロの執行人を「目指すべきコナン映画のスタンダード」の様なニュアンスで書かれている感想が多いので、現在の「コナン映画らしさ」というものもゼロの執行人の様なものに置き換わってきているのかもしれないと、ちょっと複雑な気分になった。
(よく見かける不満点の多くも、私としてはむしろ長所として評価していたものが多かった。少年探偵団の出番が多すぎるとか、秀吉と由美のパートが余計とか、アクションが地味とか、登場人物の多くに見せ場を作りすぎて物語が散漫とか、赤井が最後に活躍しないとか、殺人が起こらないから緊張感がないとか)