「オヤジの渋さを×100ぐらいで満喫出来るいちいち渋い作品ですw」一度も撃ってません 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
オヤジの渋さを×100ぐらいで満喫出来るいちいち渋い作品ですw
予告編を観た時には"コメディか?"と思い、なんとなく面白そうだったので、チェックはしていましたが、観た人の感想がかなり高めで好みな感じだったので観賞しました。
で、感想はと言うと、良い♪
渋い!いちいち渋いw
全然コメディではない。一度も人を撃った事を無いと言うのはハードボイルド設定で言うと確かにコメディではありますが、そこはかと流れる面白さがコメディチックなだけでコメディでないので、タイトルで騙されたと思う人もいるでしょうし、タイトルだけで観るのが疎遠になってしまった人にはかなり勿体ない。
ハマる人にはビシッとハマる作品ではないでしょうか。
まず脚本の丸山昇一さんが良い♪
80年代の角川映画ハードボイルド作品の担い手で、松田優作さんの作品を紐解いていくと必ず挙がるのが脚本家の丸山昇一さん。
古き良きハードボイルド作品を描きながらも根底に流れるのはデビュー作の「探偵物語」で培われたユーモアの融合。
なので、どことなくユーモラスな雰囲気とハードボイルドの組み合わせが好きな人にはたまらん!
伝説のドラマ「探偵物語」をハードボイルドではなく、ハートボイルドと言う風に言われたのは有名な話。
まさしく何処かハートボイルドでありますが、ハードボイルドに憧れるオヤジの胸をズキュン!と撃ち抜きますw
出演者もいちいち渋いw
石橋蓮司さんが渋すぎる。良い声♪台詞カッコ良すぎ!
「酒が夜を連れてくる」「夜が女を作る」と口にすると馬鹿みたい聞こえるが、言ってみたい!w
立ち振舞いも渋い。ラストのエンドロールで港の倉庫を思わす様な赤レンガの壁にもたれかかる様に佇み、タバコの煙を燻らす。
もう“ギャ〜ス!”と叫びたくなるw
だけど、オフの時の抜き方が良い。
朝のシジミの味噌汁を飲んで、具をチュパチュパとすすってるのなんて、もうThis is オッサンw
アナログ人間の様でスマホは持たないが秘密の部屋の書斎のパソコンはMac。デスクトップの画面は自分の渋い写真w
楽しい~♪
桃井かおりさんがやっぱり良い!
歳をとっても格好いい大人の女性を描きまくっている。
「女は猫」と言いたくなるぐらいに自由気ままに振る舞うのが良いんですよね。
来店していきなり「SUMMER TIME」を歌い出す際に持たれたシェイカーのトップ(蓋)をヒョイと外して歌い直すのなんてコミカルかつカッコ良すぎでしょ!
惚れるなぁ〜w
MVPはなんと言ってもBAR「y」のマスター、ポパイ役の新崎人生さん。
台詞は少なめですが、左腕から見えるタトゥーがアンダーグラウンドな雰囲気を醸し出しますが、鍛え上げられた筋肉が圧倒してます。
カウンターをヒョイと飛び越えるのなんて素敵w
御前零児と殺し屋との対峙が終わって、店に入ろうとする田酔の客にクローズ!と言うのがカッコ良い!
BAR「y」も良いんですよ。
キャッシュオンデリバリーもシンプルで明朗会計。店内も程良く暗く、程良く狭い。今のソーシャルディスタンスなんか絶対無理w
歴史を感じさせる木の具合も素敵。
閉店時の看板をひっくり返すと「Z」文字が檄渋い。
なんでもこの看板は亡くなられた原田芳雄さん協力だとか。
また、「y」のお客も良い感じ。
渋い感じの店に集う人達になので、何処か修羅場を潜り抜けてるのかな?と思いきや、意外とその他大勢w
最後の殺し屋と御前零児との戦いが始まる前にはそそくさと退散する。でもそのモブ加減が緩急付いてて良い。
惜しむらくは小説家で殺し屋(仲介人)と言う事で、何処までが本当で何処までがファンタジーなのかが分かり難いと言うか認識し難い事。
また、酒とタバコにはもう少し拘っても良かったかな?
御前零児がBARで飲んでいたカクテルはなんとなくギムレットの様な感じでしたが、「y」で桃井さん演じる玉淀ひかるが飲んでいたウイスキーはなんとなく「グレンフィディック」みたい。
タバコも銘柄指定ではありませんが、何吸ってたのかな?と聞きたくなる。
ここは「Peace」缶で渋く攻めて欲しかったかなぁ。
この作品が製作された背景として、2011年に死去した原田芳雄の自宅で行われた飲み会で桃井かおりが阪本順治監督に「次は石橋蓮司主演で映画を撮って欲しい」とリクエストしたことがきっかけとされているとか。
製作総指揮を務められた「キノフィルムズ」の木下直哉さんは御年54歳。
角川映画を一世風靡した角川春樹さんになんか通じる物が感じられて、多分角川映画にはかなりの影響は受けられているかと思います。
石橋蓮司さん、桃井かおりさん、大楠道代さん、阪本順治監督、丸山昇一さん、原田芳雄さん、木下直哉さんと言う方々の名前を連ねると必ず浮かび上がるのがキーワードが角川映画。そして松田優作さん。
この作品の背景には松田優作さんの作品へのリスペクトとスピリッツが感じられるんですよね。
ハンフリー・ボガードの様にはなれなくても、「探偵物語」の工藤ちゃんの様ならなれるかもしれない。そんな憧れと楽しめる要素の硬軟の融合とオヤジの渋いカッコつけ方がズキュンと胸を撃ちます。
“分かるかな〜分かんねえだろうなあ〜”ではありませんがw、渋いオヤジに憧れる方は是非観て頂きたい作品です!
クローズ!!