「不都合な真実」ザ・レポート odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
不都合な真実
元のタイトルはTHE TORTURE(拷問) REPORT、TORTUREを消したのは、実際の報告書が一部黒塗りにされたことへの揶揄でしょう。
9.11のテロの後、CIAが疑わしいアラブ人をタイの軍事基地に監禁し水攻めなどの拷問を行っていたことは、当時、ニュースでも流れていました。あれだけのテロですから、アメリカもなりふり構わずだったのでしょうと、正直、あまり責める気にはなりませんでした。
ただ、自由と民主主義を唱えるアメリカ国民にしてみれば、非人道的な野蛮な行為はプライドが許さなかったのでしょう、上院情報委員会の委員長ダイアン・ファインスタイン上院議員が主導して部下のダニエル・J・ジョーンズ(アダム・ドライバー)を中心にCIAの暴走を暴く6,200頁もの告発レポートを書きあげました。
ジョーンズに冤罪を着せ捜査を逃れようと必死のCIA、フィクション映画ならとっくに事故死に見せかけて消されていたかもしれないシチュエーションでしたね。あまりの妨害にマスコミへのリークなど葛藤する主人公、それでも何とか議会の承認を受け公開に漕ぎ着けました。
抵抗勢力の共和党にもベトナム戦争で捕虜になり拷問を受けたマケイン議員がレポート公開、断罪指示に回ってくれたことも助けになったのでしょう。
本作は、いわばアメリカの汚名返上、名誉挽回への不屈の取り組みを描きたかったのでしょうが、エンドクレジットで多くのCIA関係者がお咎めなし、それどころか長官にまで出世と出ました。長官になったのは当時、タイの秘密施設の所長だったジーナ・ハスペル、トランプ政権で女性初のCIA長官に登用されました、トランプ政権下だったら、レポートは陽の目をみることは無かったでしょうね。