配信開始日 2019年11月29日

「ザ・トーチャーリポート」ザ・レポート Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ザ・トーチャーリポート

2020年5月31日
iPhoneアプリから投稿

残虐な尋問によっていい情報を引き出すことを期待するのは、「電波の受信を良くするためにラジオを金づちで叩く」ようなもの。極端な心理的・肉体的苦痛は虚偽の自白を生みやすいという研究結果もある。

屈辱がテロリストを生むのであれば、なぜ屈辱によってテロリストが自白すると考えるのか。科学としてはもちろん、論理的にも矛盾している。

ジャック・バウアーは、強引な手法で容疑者を次々に自白させ、事件を解決する。(奇妙なことに、バウアーはテロリストに拷問されても自白しない)。

ニセ科学・心理学者のミッチェルとジェッセン。この2人は実際の尋問がどういったものかという経験がなく、さらにはアルカイダや、テロリズムの背景、地域・文化・言語の専門知識もなかった。それでも、CIAはアルカイダの調査をミッチェルとジェッセンに依頼。

状況を悪くするだけのこの方法がまかり通り、隠蔽されていく過程が淡々と描かれていた。

資料室にこもって、ただひたすら膨大な文書に目を通していくという地道な作業。最初は1年と言われていたのに、結局7年。この地味さは、そもそも映画として成り立ちにくい題材かもしれない。
唾棄すべき真実への内なる熱と、自分はあくまで当事者ではないという冷静さ。個人的なことは一切語られていない主人公なのに、鑑賞者に対して圧倒的に説得力を与えるアダムドライバーの素晴らしさ!

Raspberry