「何があっても前を向く強さ」ジョゼと虎と魚たち(2020・アニメ版) kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
何があっても前を向く強さ
今、この恋愛小説をアニメ化する意味があるのだろうか、と思いながら劇場へ。
原作とも、犬童一心監督の傑作映画とも、全く異なるアプローチでハンディキャップ女性との恋の物語を描いていた。
ジョゼは、祖母が彼女を家の外に出したがらなかったこともあってか、人との接触が苦手で、他人には好戦的な態度をとってしまう女の子。
恒夫は好青年過ぎる大学生で、夢の実現に真面目に取り組んでいる。
この二人の恋愛模様に、障害者と健常者という壁が見えはじめる。
そこで恒夫に襲いかかるアクシデントが、ストレート過ぎないかと少し違和感を覚えた。
が、恒夫を立ち直らせるためにジョゼがおこした行動を通じて、恒夫の再起たけでなくジョゼ自身も未来に立ち向かう変化を生む展開だったとは。
この構成は見事で、でき過ぎたきれい事には鼻白んでしまうが、アニメーションだと素直に受け入れられる。好い人だらけの登場人物たちも。
そこまでの過程にアニメーションらしいファンタジックな表現が挿入されていたことも、効果をあげている。
つまり、ほとんどオリジナルのストーリーにすることで、アニメ化する意味はあったということだ。
今の高いアニメーション技術においては、そうそう驚くこともなくなったが、セルアニメっぽさを感じる人物に好感が持てるし、ジョゼが絵を描くシーンで筆の動きに絵の具が引かれていくところは新鮮だった。
恒夫を演じた中川大志が上手くて感心した。イケメンは声も二枚目だった。
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