「怖いけど怖いだけじゃない世界」ジョゼと虎と魚たち(2020・アニメ版) U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
怖いけど怖いだけじゃない世界
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予想通りのエンディングだった。
が、
そこに至るまでの物語は素晴らしかった。
生まれつき足の不自由なジョゼ。
限定された世界しか知らないジョゼ。
そんな彼女の心が解放されていく様を、清原さんは見事に演じていた。それに付き添う管理人の中川氏も、第1声から声優さんと遜色ないくらい馴染んでる。
物語は案外シビアだった。
彼女の置かれている環境もそうだけど、介添人の逝去や、就職。また彼女への視線やら態度が描かれる。
舌打ちされるような事を彼女はしていない。
鼻で笑われる程、他人は彼女を知らないはずだ。
容赦ない偏見の眼差しが彼女を刺す。
よく歪まなかったなと、祖母の教育方針に胸を撫で下ろしたりもする。
好奇心の海へ管理人と共に泳ぎ出すジョゼ。
そんな彼女の変化を1番喜んでいたのは祖母なのだろうと思う。
祖母の死も、管理人の事故も衝撃的だった。
現実では充分起こりうる。
なぜアニメでは起こらないと思っていのだろうか?
突然の不幸を目にした時、頭に浮かんだのは「ジョゼ…どうやって生きてくの?」だった。
おそらく俺が抱いたその疑念を、現実に抱え続けている人達はいる。主人公に感情移入する事で、そんな当たり前の事を失念していた自分に気付く。
ジョゼと管理人の立場は一転する。
支えられる者から支える者へ。
そして、お互いがお互いを支える者へ。
出来過ぎたラストだなと思いながらも、ジョゼの笑顔を祝福せずにはおられない。
ただ…色んなとこで転ぶジョゼを見て、冒頭の下り坂もそうだけれども。もう少し体の傷や、痛さも表現はして欲しかった。かすり傷1つない状態に「あー、2次元の話だった」と片付けてしまえる。
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