「「幸せな気持ち」と「勇気」をくれる王道青春恋愛ストーリーです。感情描写が素晴らしい…長文失礼します」ジョゼと虎と魚たち(2020・アニメ版) snn 0523さんの映画レビュー(感想・評価)
「幸せな気持ち」と「勇気」をくれる王道青春恋愛ストーリーです。感情描写が素晴らしい…長文失礼します
生まれつき身体障害を抱え、狭い世界の中だけで生きてきたジョゼ。ひょんなことをキッカケに彼女の管理人になった恒夫。不器用で世間知らずのジョゼが恒夫に導かれ未知の世界でたくさんの経験や思い出を作り、次第にお互い惹かれあっていく展開がたまらなく綺麗でした。
突然の不幸。チヅさんの急逝、恒夫の交通事故。留学の話と体の自由が奪われて落ち込む恒夫の姿は観ていて心が痛くなりました。特に、恒夫が「もし一生歩けなくなったら…」とジョゼに言いかけたシーンは本当にハッとさせられました。そんな恒夫に対しジョゼが舞との対話を経て、今度は自分が恒夫を支えてみせると決心した所にジョゼの成長や恒夫への想いを感じ高揚しました。
隼人が悲憤した恒夫を病室から連れ出す時にかけた言葉は中盤のエア切れのシーンを巧みに回収することで2人の友情をより強く表現していてセリフ回しの構成に感心しました。
花菜の協力もあり完成したジョゼから恒夫へのエール「にんぎょとかがやきのつばさ」。その中にはジョゼが恒夫から貰ったたくさんの経験、優しさ、想いの全てが込められており、読み聞かせのシーンは今作随一の感動シーンでした。
ジョゼや隼人達のエールを受けた恒夫が懸命にリハビリに励み、初めて支え無しで歩きだしたシーンではEve/心海 が流れたタイミングで恒夫の努力や皆の想いが叶ったのを感じて泣いてしまいました。あれは反則ですよ笑
クライマックス。退院日にジョゼは恒夫の迎えに行きませんでした。最初は理由が分かりませんでしたが、ジョゼは必死にリハビリに励み続けた恒夫の姿を見て、自分も前に進まなければという意思から「甘えてたらアカン」と管理人離れを決意したから病院ではなく動物園に行き、かつての恐怖の象徴「猛獣」と1人対峙したのかと理解してジョゼの成長を強く感じました。
そんな想いは知らずジョゼを探す恒夫や友人達。恒夫はジョゼと出会った思い出の場所で再びジョゼを助け、病院に来なかった理由を尋ねる。管理人離れを決意したと言うジョゼに対し「俺が管理人でいたいんだよ」とありったけの思いを放ち、続けて自分の恋心を告白。ここの恒夫が本当にまっすぐでかっこよかったです。そしてジョゼ、可愛すぎました。
突然始まった2人の物語が最高の形で新たなスタートを切ったことが本当に嬉しくてこれ以上ないほど幸せな気持ちになりました。そして、わずか90分でこんなにも美しい告白シーンに持っていく脚本の構成に感動を覚えずにはいられませんでした。
それと、エンドロールで静止画ではなくアニメで本編のその後を描いてくれたのがとても嬉しかったです。ジョゼが解体されていく思い出の家を眺めているシーンは涙が出そうになりました。
総評 今まで何本もアニメ映画を観ましたが、見た後にこんなに幸せな気持ちにさせてくれる作品は初めてでした。ボンズさんの繊細かつ力強い描写表現、原作や実写と違いハッピーエンド仕立てに作りこまれた脚本、Eveさんの劇中歌をはじめとする全ての音楽、本業ではないのにも関わらずキャラクターの心情を見事に演じきり命を吹き込んだキャストの方々といった全てに文句の付け所がありませんでした。
恒夫やジョゼのように叶えたい夢に向かって挫けつつも進んでいけるような人になりたいと思いました。