「【人魚の願いは"心の翼"を自ら持つ事、大切な人に持って貰う事。健常者には分からない世界を、優しき視点で描き出した作品。】」ジョゼと虎と魚たち(2020・アニメ版) NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【人魚の願いは"心の翼"を自ら持つ事、大切な人に持って貰う事。健常者には分からない世界を、優しき視点で描き出した作品。】
■内容は人口に膾炙していると、思われるので割愛・・と思ったが、かなりアレンジメントされており、それが良い結果につながっていたと思った作品。
◆印象的なシーン及び映画の内容
・ジョゼの声を担当した清原果耶さんの透き通った声の、ツッケンドンな感じの関西弁が、良い。
ジョゼの勝気だが、哀しみを抱えた女性の声に合っていると、私は思った。
- 関西弁の女性に、男は弱い・・。ー
・ファーストシーンのジョゼと恒夫の”衝撃的な”出会いとラスト近くの雪道での衝突シーンとの連関。
- ここは、”都合が良いのでは?”とか言わない。ー
・クラリオン・エンゼルフィッシュのランプを、恒夫がジョゼに渡すシーン。
- 彼が、ジョゼへの仄かな想いを持つことと、ジョゼが”恒夫が本当に海を愛している事、メキシコ留学を強く望んでいる事”を初めて理解した事を暗示している。
そして、このクラリオン・エンゼルのランプは後半でも、重要な場面で登場する。ー
・ジョゼを守るために、交通事故に遭ってしまった恒夫。
- 分かりやすいが、恒夫はこの体験で、ジョゼの辛さを自ら経験する事でジョゼへの想いが更に強くなるのである。-
・恒夫を慕う、"ダイビングショップ"のアルバイトの同僚マイと二人の友人、ハヤトの存在の重要さ。
- ジョゼに対する恒夫の想いを薄々感じながら、車椅子を押しながら恒夫に告白するシーン。健気である。はっきりとは描かれないが、彼女がハヤトとの良好な関係性を築けると良いなあ・・。相性が良い気がするが・・。-
・ジョゼが独り立ちするために、勇気を持って図書館で、自ら書いた”人魚の願い”の絵本を子供たちに読み聞かせするシーン。サガン好きの司書カナの存在も、この作品に良い効果を齎している。
そして、そこに、ハヤトが事故に遭い、メキシコ留学を断念しかけた恒夫をきちんと連れてくる。
恒夫はジョゼの絵本からのメッセージを強く受け止め涙する。
- 今作の白眉のシーンである。二人が喪失感から再生へ向かうきっかけにもなっている。-
<田辺聖子さんの短編、実写映画、及び今作品。私は、書籍(サクッと読めます)を随分前に読み、実写映画も観ているが、
今作品は、原作の世界観を壊さずに、一つの作品としての完成度が高い”素敵な現代の恋愛映画”にアレンジメントされている。良いです。
あと、映画はエンドロールが終了し、客電が灯るまで、席を立たないように。
今作も素敵なシーンが待っています。>
■蛇足
・ちなみに私は妙齢な女性の京都弁にからきし弱い・・。すいません、例年なら今頃は、京都で呑んでいるもので・・。寂しい・・。
・ご指摘を受け、一部修正しました。「サーフィン屋→ダイビングショップ。」
NOBUさん、お邪魔します。
>原作の世界観を壊さずに、一つの作品としての完成度が高い”素敵な現代>の恋愛映画”にアレンジメントされている。
私もそう感じました。
原作のストーリーから「話の骨格」を抜き出し、それに新たに肉付けして
新たにとても素敵な物語ができたように思います。