「役者は文句なし。だが、」星の子 Jaxさんの映画レビュー(感想・評価)
役者は文句なし。だが、
芦田愛菜さんはじめ役者陣の演技は素晴らしい。だが、宗教を信じる親を信じることがやや美化されているのではないかと思ってしまう。
統一教会の問題が明らかになり、まだ解決していないどころか与党自民党とがっつり癒着している現状で、この物語を観ることの意義を考えてしまう。
決して宗教を信じること自体が悪いわけではない。それは新興宗教も同じだろう。だが往々にして子供には選ぶ自由がなく、その生活が親の信仰によって犠牲になるという現実がある。
この物語の主人公ちひろは両親に大事に育てられ愛されている、ように見える。
しかし序盤と中盤で家が明らかに貧しくなっている。コンビニのペットボトルより高い水を毎日買って飲み、それ以外にも宗教にたくさん貢いでいるためか、宗教に入れ込んでいることがばれて仕事が続けられなくなったのか、いずれもにせよ修学旅行の費用を叔父に借りなければならないほどに困窮していることがわかる。
現実は映画よりも遙かに残酷だ。数々の宗教2世が親から鞭で打たれたり、食事を抜かれたり、自由に進路を選べなかったり、学費に充てるべきお金を親が宗教に入れあげて苦しんできているといった証言がようやく明るみになってきている。親が輸血を拒否して亡くなった事件もあった。
子供は親を選べない。どんな親であっても愛されたいと願ってしまうし、その宗教がインチキだとわかっていても叔父に糾弾される両親をみれば思わず叔父のほうにハサミを向けてしまう。
後半、ちひろが両親を捜し回っても見つけられないのは、昇子さんが両親と会えないよう嘘の場所を教えていたのではないかと邪推。あくまでちひろはまだ両親の庇護下にあり、両親なしではどこにも行くことが出来ない子供であることを痛感させようとしたのではないだろうか。
ラストシーン、ちひろは両親のために流れ星を見たと嘘をつくことはあっても、あの3人が同じ流れ星をみることはないのだろうし、ちひろは自分の病気のせいで両親が宗教に入れ込むことになった罪悪感を抱え、矛盾に苦しんでいくのだろう。
単純な解決策を提示しないという点では評価できるが、もう少し宗教側への報いが会って欲しかった気はする。