「今に続く闘いの狼煙を上げたは、アンカーウーマン」スキャンダル 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
今に続く闘いの狼煙を上げたは、アンカーウーマン
開幕早々、2つの事に驚いた。
まず、シャーリズ・セロンの面影ナシ!
演じたのは、アメリカ人なら誰もが知っているという人気キャスター、メーガン・ケリー。
恥ずかしながら本作の前までは知らず、似てる!似てる!と大評判の特殊メイク施したシャーリズの画像とメーガンご本人の画像を見てみたら…、
凄まじいそっくりメイクが作品の内容と等しいくらい超驚き!
見よ! これが日本人の誇り、カズ・ヒロ氏の神業だ!
そしてもう一つは、トランプ攻撃。
トランプが独裁者になる直前。メーガンは討論会やニュースの対談などで、直接トランプと衝突する。
きっとトランプは名前だけで、よくある相手側へ配慮…と、思ったら!
ニュース映像や肉声など、思ってた以上にガッツリ登場!
トランプが独裁者となった今、よく作れた…いや、よく作った!
きっと、妨害や圧力あった筈。
それにもめげず、企画が頓挫しかけた時も、兼プロデューサーとして完成に漕ぎ着けたシャーリズ。最近は専ら、アクション・ヒロインとして人気だが、本当の意味で闘う女性だ!
米大手のTV局、FOXニュース。
2016年、そのCEOで米TV業界の帝王ロジャー・エイルズを女性キャスターがセクハラで訴えた、全米震撼の実話を基に映画化。
日本で例えるなら、徳島アナや貴島明日香ちゃんが日テレのCEOにセクハラ受けたような事。ゆ、許せん…!(#`皿´)
事の発端は…
看板キャスターの一人、グレッチェン・カールソンの解雇。
視聴率の最もいい朝のニュース番組を降ろされ、視聴率の最も悪い昼のニュースに左遷され…。
元々我の強い性格でもあるが、かつてロジャーからの性的誘いを断った事があり…。
若い社員のケイラ。
ミス続くが、TV業界での成功を夢見る野心家の面あり。
そんな彼女の若さと美貌をロジャーが気に入り、ある時彼のオフィスに呼ばれ、そこで…。
そんな時、グレッチェンがロジャーを提訴。
局が大スキャンダルで揺れる中、メーガンは沈黙を突き通す…。
訴えの声を上げた者、新たな被害者、事の成り行きを見る者…。
彼女たちが各々どう動くか。
作品は三者三様の視点で展開していく。
それにしても意外なのは、局内の女性のほとんどがロジャー派だという事。“チーム・ロジャー”なんて女性たちも現れる。
そこにどんな思惑があるか分からないが、一応超大物でやり手だし、TV界に多大な貢献をし、多くの女性たちに今の地位や仕事を与えた。
つまり今話題の、施されたら施し返す。恩返しで御座います!…ってやつ。
しかし、だからと言って許されるものではない。
徐々に出るわ出るわの醜聞。
女性軽視発言。女性を性の捌け口。自分の好みなのか、局内のほとんどの女性にタイトな服やミニスカを履かせ、生足がセクシーに見えるようワイドで撮る。当時、それ目的で見てた視聴者も多かったんだろうなぁ…。
そして、ケイラとの自室での“密会”。
もはやあれは、変態エロじじいに他ならない。
しかもそれを、口封じさせる。
セクハラでパワハラ。
ロジャーにハーヴェイ・ワインスタイン、そしてきっとトランプも、皆似た者同士。
ケイラ役のマーゴット・ロビー。
演じた役は複数の女性被害者を合わせた架空の役柄らしいが、その苦悩はリアル。号泣するシーンは胸に迫った。
ニコール・キッドマン演じるグレッチェンも実在の人物。シャーリズとマーゴットはオスカーにノミネートされ、彼女だけ弾かれたが、実際にあったこの物語は彼女の勇気ある告発が無ければ始まらなかった。
シャーリズ、ニコール、マーゴット…実力も華もあるハリウッド3大女優の共演。3人がエレベーターで一緒になるシーンは、スゲェ…!
ロジャーも存在感無くてはならない。ジョン・リスゴーがさすが! 彼もまたカズ・ヒロによる特殊メイクで、さながら“ジャバ・ザ・ハット”級!
それから、ケイラの同僚役のケイト・マッキノンも好助演。
ロジャーはあの手この手で妨害。全面否定する。
当初は孤立無援だったグレッチェンだが、後に続く同じ被害女性たちが。
そして遂にメーガンも動く。
旗色が悪くなってきたロジャー。
グレッチェンがトドメの一撃。
それでもロジャーの悪あがき。とことん憐れな奴…。
グレッチェン以外の女性キャスターたちが後出しジャンケンと指摘されてるが、それくらい権力に立ち向かうのが難しいという事を自分的には感じた。
かつては『オースティン・パワーズ』『ミート・ザ・ペアレンツ』などコメディ派だったが、最近はシリアス作品も多いジェイ・ローチの演出も快テンポ。
実話、実名、スキャンダラスな内容で興味津々で、確かに面白かった。一本の映画として。
しかし、実際の関係者や業界に与えた衝撃はただ事ではないだろう。
ハリウッド映画業界でもさらに悪質なワインスタインの事件があったが、日本でも間違いなくあるだろう。
“枕営業”なんて言葉をよく聞く。
関係を迫る側。
業界での成功の為、自ら体を売る側。
それは氷山の一角で、明るみになってない事実はどれほどあるだろう。
どの国でも、どの業界でも。
エンタメ業界は夢のある世界か、それとも…。
ラストのケイラの姿が意味深だ。
が、本事件やワインスタイン事件がきっかけで拡がった#ME TOO運動。
それは今も続く。
こんにちは♪
本レビュー、詳しくまざまざと思い出しながら拝読させていただきました。日テレのくだりは笑いましたが、笑っちゃいけないですね。
ロジャーさんの風貌に驚きキャストランを見たら、エッ⁉️、
メイクなのでしたね。
『SHE SAID』ですか。あちらも、
画面から目を離せず観ました。
ありがとうございました😊
近大さんのレビュー、すごく良かったです。こういうテーマはどうしても胸がざわついて苦しくなります。でも、映画としての面白さも書いて下さっているので、涼しい風が吹きました。