「またも作品に恵まれなかった三浦春馬が気の毒」ブレイブ 群青戦記 アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)
またも作品に恵まれなかった三浦春馬が気の毒
原作は 100 万部を超える売上を誇るコミックだそうだが未読である。各キャラの背景など、コミックでゆっくり読めば面白いのかもしれないが、映画では尺の都合上、極めて大雑把な紹介にならざるを得ず、非常に描き方が雑で浅かった。それは主人公も同じで、いくらネガティブな高校生活を送っていたと言っても、周りでバタバタと同級生たちが殺されているという状況でも変わらないというのは、「殺すくらいなら殺されよう」という共産党の支持者なのではと唖然とさせられた。
時代劇の設定は極めていい加減である。信長も家康も総髪というのがそもそも解せない。月代を剃らない髷というのは医師や学者など非戦闘員の髪型である。最近の時代劇ではやたらに目につくのがこの総髪の武士である。月代を剃り上げた姿がカッコ悪いと思っているのだろうが、それは完全に現代の視点であり、昔は月代を剃り上げることの方がカッコ良かったのである。
タイムスリップ直後の襲撃シーンも解せない。武器も持たず無抵抗の人の群れに対して完全に武装した者たちが襲いかかって虐殺をしたところで一体何の得があるのか?男は人夫にし、女は女郎として売った方が得になるはずである。何者かの指示があったとしたら、徹底して行うはずで、一部を捕虜になどする意味がない。捕虜とは後の交渉のためにしか使えないからである。
主要なキャラが次々と殺害されていく中で主人公も考え方を改めるのだが、それがまた唐突で、表情が終始能面のようで読み取れないため、全く見ている方は呆気に取られるばかりである。新田真剣佑はどういう演技プランでこのように表情に乏しい演技を貫いているのか、全く訳が分からない。原作ならじっくり時間をかけて描けているのかも知れないが、この映画では全く不可解に物語が進行する。この監督は、若い子たちが無残に殺されていくシーンが撮りたいだけなのではないのかという疑問がずっと拭えない。それほどまでに執拗な暴力描写が延々と続くのである。
友人が殺されたと言ってはその遺体を囲んで泣きわめくのもあり得ない話である。敵の真っ只中でそれをやったらどうぞ殺してくださいと言ってるも同然である。一旦敵を撃退した後でそういうシーンに移行するくらいの段取りがあるべきではなかったか。何とも間抜けな演出であった。原作では教師や刑事もタイムスリップするらしいのだが、本作では何故か高校生しか登場しない。
どこかで見たような雰囲気だと思ったら、まさに「バトル・ロワイヤル」であることに気が付いた。戦国時代のコスプレ付きのバトル・ロワイヤルという言い方が最もピッタリ来るであろう。時代劇などこの映画に期待するのは無駄である。また、雷の電力で元の世界に戻ろうというアイデアや仕掛けは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を彷彿とさせたが、雷の電力を流すには細過ぎる電線がまた脱力ものであった。タイムスリップものに付き物の時間を隔てたノスタルジックなエピソードも、取って付けたようで、ホントに肩透かしであった。
三浦春馬はまたも出演作に恵まれなかったかという無念さばかりが心に残った。
(映像4+脚本1+役者3+音楽3+演出1)×4= 48 点。