「老後、老後と言うけれど、」老後の資金がありません! 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
老後、老後と言うけれど、
老後に2000万円必要。そんな情報に踊らされる中流上の家族を
コミカルに描いたコメディ映画です。
結婚式・老後・葬式・・・すべてを《人並みに》。
主人公の篤子(天海祐希)の価値観です。
老後の資金とひと口に言ってもそれこそケースバイケース、千差万別だと思うんです。
この映画は新聞・テレビ経済評論家(荻原浩子さん、本人役で出演してます、)が、
口々にいう理屈をを鵜呑みにしてませんか?
私も、あるある、そうそうと頷きながら、身につまされて笑って観ていましたが・・・
でも、あれっと思うところ、多々あるんですよね。
舅の葬式=330万。
後藤家の夫(松重豊)と妻篤子(天海祐希)のW失業。
派手で浪費家の姑(草笛光子)と同居。
娘の結婚式の予算300万(これは、予定です)
想定外の事態が次々と押し寄せる。
全て人並みにやりたい。
その見栄や思いやりが、舅の派手な葬式を選ぶのだと思う。
(義妹=若村麻由美=の言葉にも、葬儀社の友近の畳み掛ける言葉にも、
かなりの説得力がある)
姑の入居していた高級ケア付老人ホーム。
(維持費がかさみ、こちらも終の住処ではないのだと分かる・・・
・・・小金持ちには小金持ちの苦労があると知る)
この映画の描く老後感。
なんだか、古いのではないでしょうか?
80歳過ぎの親の葬儀を大々的に行う意味は?
子供に地位があり、会葬者から高額の香典が期待できる以外は、
今時は家族葬に決まっている。
(コロナ禍でこの傾向に拍車がかかる)
結婚式だって、最近は半数は挙げていないのじゃ。
ちょっぴり過去の日本の話ではないでしょうか?
少なくとも《貧乏人のレベルの話ではない》
そして、《お金がない、ない》と言いながらも、
《引き出す貯金がある》のです。
派手な葬式も出来るからするのだと思う。
その貯金が目減りして不安になる。
(篤子の優しさも一因で、冷酷にはなれないのよね)
生前葬の草笛光子のワンマンショーを見て、
草笛さんは若くて姿勢が良く、本当にチャーミング。
この魅力、一般人のものではないのは明らか。
スターのオーラだもの。
生前葬をしたって死ぬ訳ではない。
そこから10年20年ですよ。
そして遂に映画はラストに・・・
このラスト、都合が良すぎて、出来過ぎ!!
老後には薔薇色の未来が、あるのよ!みたいな展開。
これって、
健康とお金があってこそ出来ること。
《脳梗塞の後遺症や長引く癌の治療それに認知症のリスク》
半分以上の人がそのどれかになる。
楽しい老後は、そうなるまでの期間。
私たちの「老後」の、
実は1番のリスクは、長生きすること!!
だけれど、そこを描かないのは正解だと思う。
みんなそんな事知ってるし、誰もそんな話、聞きたくないもんね。