劇場公開日 2021年4月9日

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「B級感が滲んだ仰々しいタイトルとは裏腹のずっしり重い社会派サスペンス」21ブリッジ よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0B級感が滲んだ仰々しいタイトルとは裏腹のずっしり重い社会派サスペンス

2021年4月25日
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鑑賞方法:映画館

NYPDのアンドレは幼い頃に殉職した父の遺志を継いで刑事となった男。並外れた正義感を持つアンドレは警官殺しの犯人を射殺したことで功績を挙げるが、一方で行き過ぎた捜査だったのではないかと内務調査部から目をつけられていた。そんな折2人組の強盗が深夜のレストランに押し入り駆けつけた警官達を射殺する事件が発生、そのレストランには莫大な量のコカインが保管されており、強盗はその一部を奪って逃走したことが判明する。アンドレはお目付役としてタッグを組まされた麻薬取締班の刑事でシングルマザーのフランキーと犯人を追うため、マンハッタン島に渡る21ヶ所の橋や地下鉄を封鎖することを主張。午前5時までに犯人を確保することを条件に許可を取り付けた2人はすぐさま足取りを追うが、この事件には不審な影がつきまとっていた。

普通のB級アクションのつもりで観始めましたが、強盗の片割れを演じているのが『バトルシップ』の主演だったテイラー・キッチュだと気づいた瞬間にこれは普通の刑事モノではないと直感。盗んだコカインをなんとか換金しようとする強盗コンビの焦燥をしっかり描写しながら彼らが単なる駒に過ぎないことを少しずつ見せていく演出が実に巧い。彼らを追うアンドレ達が一歩ずつ彼らを追い詰めていく地味な捜査劇に忍び寄る不穏な影の輪郭がはっきりしてくると仰々しいタイトルがただの飾りに過ぎないことが判り、主要な登場人物達の心理描写に迫るクライマックスで、本作がニューヨークとその郊外に巣食う深い闇を捉えた社会派サスペンスであることが言外に示される。予告でもチラッとネタは割れていたのですが、そこで予想していたような結末とは全く異なるずっしりとした余韻が印象的。シルベスター・スタローン主演の40年前の傑作『ナイトホークス』を彷彿とさせる渋い作品です。

2018年に撮影された作品で、チャドウィック・ボーズマンが『アベンジャーズ/エンドゲーム』のブラックパンサーに比して心なしかかなり痩せて見えるのが物悲しいですが、予告でもチラッとしか映るアンドレの父の葬儀を俯瞰するカットの美しさが物語るように細部まで丁寧に作り込まれているので、凡百のB級作品とは一線を画す力作であることが一人でも多くの人に伝わるといいなと思います。先日観たばかりの『パーム・スプリングス』での役柄とは全く異なる燻銀の風格を見せるJ・K・シモンズの演技も見事です。

よね