「【ある女性の母への、そして、ある男性の父に対する屈託した思いと、幾つかの仄かな恋愛を、シンメトリーな複数の美しい映像を背景に静的に描いた作品。】」コロンバス NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【ある女性の母への、そして、ある男性の父に対する屈託した思いと、幾つかの仄かな恋愛を、シンメトリーな複数の美しい映像を背景に静的に描いた作品。】
ーアメリカインディアナ州コロンバスという小さな町はモダニズム建築の宝庫だそうである。浅学非才な私は知らなかった・・。
モダニズム建築であれば、今作でも映像で映し出されるが、シンメトリーに重きを置くわけではなく、幾何学的な美しさであろう。
が、私の今作のイメージは”シンメトリックな構図の美しさ”である。(ウェス・アンダーソン監督程拘りのない程度の・・)-
ー以下、少しストーリーに触れて・・・・、いるのかな?-
・物語は、冒頭、韓国人の”nで終わる”ジンの父で、高名な建築学者がシンメトリックな建物の脇で倒れるところから、始まる。
その後、物語は実に淡々と進む。(近年、これだけ淡々とした洋画は記憶にない。)
母へのある思いを抱える、図書館員のケイシーとジンとが出会い、建築を媒介にして交わす会話。
ケイシーに思いを寄せるタバコが苦手な男性図書館員との会話。
そして、幾つかの恋・・。
ーその過程を経て、ケイシーは諦めかけていた”夢”に向かって、新たな一歩を踏み出す決意をする・・。ー
■だが、今作の魅力は、ストーリーを楽しむとともに、
・シンメトリックな映像の美しさや(一部、非シンメトリックなモダニズム建築含む)
・男女の絡みを鏡に映った姿で見せるとか・・、
・会話する二人のうち、一人だけ映すとか・・、
監督と撮影陣の遊び心を、見ている側も楽しむところにもあるのではないだろうか。
<資料には、今作の監督が小津監督に傾倒して・・、とあるので、今作製作の狙いは”そこ”なのだろう。
だが、私は今作の映像や雰囲気と、小津作品との親和性は余り感じなかった。
(小津監督の作品の美しさは、日本の木造建築や枯山水の庭や、坪庭に漂う侘び寂びの中にこそあると思っているので・・。)
けれども、小津監督の作品は、世界の多くの映画監督から愛されている訳で、コゴナダ監督の解釈も、充分有りなのかもしれないなあ・・、などと思いながら劇場を後にした。>