「ほぼ台詞ない久保田紗友の雄弁な表情。吹き替えなしの和太鼓演奏も聴き応えあり」藍に響け 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
ほぼ台詞ない久保田紗友の雄弁な表情。吹き替えなしの和太鼓演奏も聴き応えあり
菊地健雄監督作「ハローグッバイ」以来注目している久保田紗友。本作で演じる女子高生マリアは、交通事故で声帯を痛めて声を出せない。手話も少し使うが、ほぼ台詞なしで意思や感情を表情のみで伝えなければならない難役を見事にものにした。整った顔立ちゆえか、これまでクールなキャラクターや陰のある役どころを演じることが多かったが、強い目力と豊かな表情で新たな魅力を発揮している。
漫画「和太鼓†ガールズ」の実写映画化で、久保田とダブル主演の紺野彩夏のほか、映画やドラマでよく目にする人気若手女優たちが大勢出演しているが、メインの2人以外はキャラクターの描き分けがやや足りない。登場人物を絞り込み、2人を軸とする本筋に有機的にからむエピソードを加えるとドラマの深みもさらに増したのではないか。
とはいえ、女優たちが猛特訓して吹き替えなしで臨んだ和太鼓の演奏は大いに聴き応えがあり、終盤の舞台でのパフォーマンスはしなやかで美しく、太鼓の音の躍動感や重く深い響きそのものの魅力をじっくり伝える演出とサウンドデザインも好ましく感じた。極上音響上映などがあれば独特の重低音をさらに堪能できそうだ。
コメントする