劇場公開日 2020年7月17日

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「この落書きをトモコは知らない。何もかもトモコは知らない。」ステップ 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0この落書きをトモコは知らない。何もかもトモコは知らない。

2020年8月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

父親役に山田孝之をもってきたことで、まずこの映画は成功だった。普段から、優しく受け身の役が多い役者なら、映画も見栄えがしないし、メッセージは弱かった。
そして、娘役(幼少期は評価外)の二人の上手さがそれを助けた。「永い言い訳」の子は抜群の安定感。小高~中学生の子も多感な年頃の機微の良さ。
それからケロ先生。伊藤沙莉ってどこまでスキル隠してんだよって舌を巻く。ドン臭いコケかたなんて、「上手い!」って心で叫んだ。しかも泣きどころまで抑えてたし。
東京03角田も役者一本でもいい。コントで仕込んだわざとらしさとさりげなさの微妙な曖昧さ。なかなか出せない。
最後の打順でしっかりヒットを飛ばす信頼できるバッターのような広末涼子が、終盤のヤマに花を添える。
脇を固める他のキャスト含め、ここまでいいとケチのつけようがない。ずっと気を散らさずに山田孝之を応援してたもの。
ストーリーをなぞることはしない。だって重松清なんだから、泣かされることは初めから覚悟していたから。その通り、泣かされた。赤い線をなぞるところ(しかも何人も)で何度も。幸せになるステップを踏むことはつらいことだなあ。大事な思い出を乗り越えることでもあるのだもの。でもそれは忘れるためではなく、新しい思い出を作っていくことなんだ。

栗太郎