「娘と父の関係性のタペストリー」ステップ h.h.atsuさんの映画レビュー(感想・評価)
娘と父の関係性のタペストリー
映像はカレンダーの場面に始まり、カレンダーの場面で終わる。
カレンダーからはみ出したサインペンの線は、その下の壁にまで伸びていて、その跡は、主人公の健一の心にずっと引っかかっている。
この物語は、母を亡くした娘と父の関係性を淡々と描いている。最初は2人きりになり支えあって生きていくしかない共依存の関係。
娘が大きくなり、関係性を小学校の友だちと家族以外にも持てるようになる。そして父親が母とは別の女性を連れてくるようになると、自分と母親が裏切られたような気持ちになるのか、父親との関係性が微妙に崩れていく。
自分(娘)も成長するなかで、(自分は離れようとしても)父親は決して自分を見捨てずにそばにいてくれている。祖父母や伯父夫婦も一定の距離感であたたかく見守ってくれている。
雪が溶けていくように、ふたりの間の深い溝も解けていく。
ヒトはちょっとした言葉に傷つけられ、救われたりもする。
言った相手は相手に優しい言葉を投げたつもりでも、受けた相手の心を深く傷つけることもあるし、相手のちょっとした思いつきで発した心の気持ちの言葉に救われて、その後の行動が大きくポジティブに変化することもあるだろう。
当たり前の日常の「有り難さ」に感謝し、たまには家族に「ありがとう」と面と向かって伝えたい。
名バイプレイヤーの面々の演技が、作品のクオリティを一層高めている。
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